自由都市ダンツィヒ

自由都市ダンツィヒの歴史と特徴

自由都市ダンツィヒ（Freie Stadt Danzig、Wolne Miasto Gdańsk）は、第一次世界大戦後の1920年から1939年まで存在した特異な都市国家です。この地域は、現在のグダニスク（Danzig）にあたる市域とその周辺の村々から成り立っていました。ダンツィヒの人口の大部分はドイツ人でしたが、ポーランド人やカシューブ人などの少数民族も居住していました。特に興味深いのは、この自由都市の成立がどのようにして行われたのかという点です。

ヴェルサイユ条約と自由都市の成立

自由都市ダンツィヒの誕生は、1919年に結ばれたヴェルサイユ条約によるもので、条約の第100条から108条がこの地域の国際的地位を定義しています。特に、ダンツィヒは国際連盟の保護下に置かれ、独自の憲法を持つことが求められました。実際に自由都市の設立が宣言されたのは、1920年11月15日のことでした。これにより、ダンツィヒはドイツとポーランドの境目に位置し、国としての自立性を保つことが求められました。

領土と人口

自由都市ダンツィヒの領土には、都市部のほか、ツォポト（ソポト）やティーゲンホーフ、ノイタイヒなどの村が含まれ、その面積は1966平方キロメートルでした。地域の人口は1920年から1929年にかけて増加し、357,000人から408,000人に達しました。約95%はドイツ人で、残りがカシューブ人やポーランド人という構成でした。この期間中、約60,000人のポーランド系とロシア系ユダヤ人が北米に移住するという現象も見られました。

ポーランドとの関係

自由都市ダンツィヒは、ポーランドと関税同盟を結び、ポーランドへの鉄道が当地で管理されるという特異な状況でした。この鉄道は、ポーランドの管理下にあり、また、港においてもポーランドの事務所が存在しました。特にヴェステルプラッテはポーランドの軍事的要所でもありました。ポーランドの軍需物資の取り扱いに関しては、港湾労働者によるボイコット事件が発生するなど、緊張関係が表面化することもありました。

政治状況の変遷

自由都市の最初の市長はハインリヒ・ザームであり、さまざまな政党が議席を持った制憲議会が設置されました。特に注目すべきは、1933年にナチスが市議会選挙で勝利し、政治的権力を握るようになったことです。この結果、ダンツィヒは反ユダヤ、反カトリックの法律を導入し、特殊な政治的風潮が形成されました。ナチスによる強制同一化政策は次第に進み、1934年には新市長が任命されて権力の再編がなされました。

第二次世界大戦とその後

1939年9月1日には、ドイツ軍の艦船がダンツィヒに対して攻撃を開始し、これにより第二次世界大戦が勃発しました。この際、ダンツィヒは再びドイツに編入され、ユダヤ系住民はホロコーストの犠牲となるなど、悲惨な歴史を辿りました。戦後、ダンツィヒはポーランドの一部となり、1945年には赤軍によって解放されました。しかし、戦争を経て、ダンツィヒの人口の約90%が死亡または避難し、その後大規模な移住が続いたため、地域の構造は大きく変わりました。

結論

自由都市ダンツィヒは、国家的なアイデンティティや民族の関係が交錯する複雑な地域であり、20世紀初頭のヨーロッパの歴史を知るうえで非常に重要な存在でした。戦争と政治的な動向がこの都市に与えた影響は計り知れず、その歴史は現在のグダニスクにも影響を及ぼしています。

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