臭化シアン

臭化シアン：性質、用途、安全性

臭化シアン(CNBr)は、炭素、窒素、臭素から構成される無機化合物です。その化学式はCNBrで表され、シアンと臭素の擬ハロゲン化合物として分類されます。独特な化学的性質から、生化学分野、特にタンパク質化学において重要な役割を担っています。

物理的および化学的性質

臭化シアンは、炭素と窒素の間に三重結合、炭素と臭素の間に単結合を持つ線形分子構造をしています。極性分子ですが、水中でイオン化しないため、水と多くの有機溶媒に溶解します。

臭化シアンは、[シアン化ナトリウム]と[臭素]から、[ジシアン]を中間体として二段階反応で合成されます。まず、シアン化ナトリウムと臭素が反応してジシアンと臭化ナトリウムを生じ、その後、ジシアンが臭素と反応して臭化シアンを生成します。この合成経路は以下の反応式で表せます。

段階1: 2NaCN + Br₂ → C₂N₂ + 2NaBr

段階2: C₂N₂ + Br₂ → 2CNBr

臭化シアンは[加水分解]]を受けやすく、水と反応してシアン化水素(HCN)と[[次亜臭素酸]を生成します。この反応は、臭化シアンの取り扱いにおける安全上の重要な側面です。

CNBr + H₂O → HCN + HBrO

生化学における用途

臭化シアンは、タンパク質化学において、特異的なタンパク質切断試薬として広く利用されています。メチオニン残基のカルボキシル基側でペプチド鎖を選択的に切断する性質を持っています。この性質を利用することで、タンパク質の一次構造解析や、特定のペプチド断片の単離・精製などが可能になります。切断反応の後、メチオニン残基はホモセリンラクトンに変換されます。

安全性に関する情報

臭化シアンは非常に強い毒性を持ち、日本の毒物及び劇物取締法において毒物に指定されています。吸入、経口摂取、皮膚接触のいずれによっても人体に深刻な影響を与えます。吸入した場合の最低中毒濃度は16ppm、ラットにおける吸入LC50値は350ppmと報告されています。

臭化シアン自体は不燃性ですが、加熱、加水、酸との接触によって、非常に危険なシアン化水素や臭化水素が発生する可能性があります。そのため、臭化シアンを取り扱う際には、適切な安全対策（換気、防護服の着用、安全キャビネットの使用など）を講じることが不可欠です。また、廃棄処理についても、専門業者に依頼するなど適切な方法で行う必要があります。

臭化シアンは強力な毒性を有する化合物であるため、取り扱いには専門知識と十分な注意が必要です。実験室での使用は、適切な安全管理体制の下で行われるべきです。

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