至上権承認の宣誓

至上権承認の宣誓とは

至上権承認の宣誓（Oath of Supremacy）は、16世紀のイングランドで、国王をイングランド国教会の最高権威者と認めることを誓うものでした。この宣誓は、イングランド国教会成立以降の近世イングランドにおいて、公職や教会の役職に就く者に義務付けられ、拒否した場合は反逆罪に問われるという厳しいものでした。

歴史的背景

元々はヘンリー8世が1534年に制定した国王至上法によって定められました。しかし、ヘンリー8世の娘メアリー1世の時代に廃止され、エリザベス1世の時代に1559年の国王至上法によって復活しました。その後、代議士や大学生にも対象が拡大されました。

カトリック教徒は長らくこの宣誓が障壁となり公職に就くことができませんでしたが、1829年にようやく代議士となることが許されました。また、オックスフォード大学では1854年のオックスフォード大学法により、学生に対する宣誓の義務が廃止されました。

宣誓の内容

宣誓の内容は時代によって異なりましたが、基本的には国王をイングランド国教会の最高統治者として認めるものでした。以下は、1535年と1559年の国王至上法に基づく宣誓文の例です。

1535年の国王至上法に基づく宣誓文
1559年の国王至上法に基づく宣誓文

罰則

至上権承認の宣誓を拒否したカトリック教徒は、王権蔑視罪（praemunire）という反逆罪に問われました。例えば、トマス・モアは、ヘンリー8世の離婚と、国王を国教会の最高権威者とする立場を認めなかったため、投獄され、最終的には反逆罪で処刑されました。

例外的な運用

王政復古後のチャールズ2世とジェームズ2世の時代には、王室がカトリックに傾倒していたため、至上権承認の宣誓はあまり用いられませんでした。カトリック教徒が公然と公職に就くこともあり、スティーブン・ライスやジャスティン・マッカーシーなどがその例です。しかし、名誉革命後のウィリアム3世とメアリー2世の時代になると、再び宣誓の重要性が認識されるようになりました。

まとめ

至上権承認の宣誓は、イングランドの宗教改革における国王の権威を確立するための重要な手段でした。しかし、カトリック教徒にとっては信仰を捨てるか、公職を諦めるかの選択を迫られる苦難の道でもありました。この宣誓の歴史は、宗教と政治が密接に結びついていた時代の複雑さを物語っています。

この宣誓は、イングランドの歴史において、宗教と政治が深く結びついていた時代を象徴する出来事の一つと言えるでしょう。

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