興地隆史

興地 隆史（おきぢ たかし）

興地隆史氏は、1959年9月に誕生した日本の著名な歯科医師であり歯学者です。現在の所属は東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科で、医歯学系専攻口腔機能再構築学講座の歯髄生物学分野において教授を務めています。また、歯科医学界における重鎮として、日本歯科保存学会の理事長という要職を担っています。

氏の学術的なキャリアは、1984年に東京医科歯科大学歯学部を卒業したことから始まります。その後、同大学の大学院に進学し、1988年に課程を修了しました。大学院修了と同年の1988年には、東京医科歯科大学より歯学博士の学位を取得しています。この際の博士論文のテーマは「ラット実験的歯髄炎におけるアラキドン酸代謝物の関与について」であり、歯髄の炎症メカニズムに関する基礎研究に早くから取り組んでいたことがうかがえます。

大学院修了後は、母校である東京医科歯科大学で助手、次いで講師として教育・研究活動に従事しました。その後、2001年には新潟大学歯学部附属病院の教授に就任し、研究と教育の場を移します。さらに2003年からは、新潟大学医歯学総合研究科口腔生命科学専攻内の口腔健康科学講座う蝕学分野の教授として、特にう蝕（虫歯）に関する研究と教育を推進しました。長らく新潟の地で活躍した後、2015年1月には再び東京医科歯科大学に戻り、大学院医歯学総合研究科の教授（歯髄生物学分野）として現在に至ります。この経歴は、基礎研究から臨床応用、そして教育と多角的に歯科医学に貢献してきた氏の歩みを示しています。

学会活動においても極めて活発であり、特に日本歯科保存学会では理事長を務めるほか、常任理事や歯科保存治療専門医としても学会の運営と学術振興に貢献しています。他にも、日本歯内療法学会、日本歯科審美学会で理事を務めるなど、専門分野を超えた幅広い領域でリーダーシップを発揮しています。さらに、日本歯科医学教育学会の評議員として歯科医学教育の質の向上に尽力するほか、歯科基礎医学会、国際歯科研究学会、国際歯科研究学会日本部会、日本顕微鏡歯科学会、日本炎症・再生医学会、口腔病学会、新潟歯学会など、多岐にわたる学術団体に所属し、それぞれの評議員や理事を務めています。これらの活動は、歯科保存治療や歯内療法学を中心に据えつつも、関連する基礎医学、臨床医学、教育分野にも深い関心を持ち、積極的に関与していることを示しています。

著作活動も非常に精力的に行っています。単著としては、歯内療法の診断と治療戦略に焦点を当てた『歯内療法のケースアセスメントと臨床 根管形態からみる・ストラテジーを選ぶ』を出版しています。また、歯髄の保存治療の重要性を説く『失敗しない歯髄保存療法 抜髄する前にもう一度歯髄診断をしよう』や、多角的な視点から歯内治療を解説した『臨床歯内療法 器材・薬剤・テクニックのコンビネーション』、歯内治療学の標準的な教科書である『エンドドンティクス』、さらに『歯内治療学』といった多くの編著に携わっています。他にも、『象牙質知覚過敏症 目からウロコのパーフェクト治療ガイド』を韓臨麟氏と共著で発表し、特定の臨床課題に対する実践的な解決策を提示しています。また、『口腔組織・発生学』や『接着歯学』といった基礎・応用分野の主要な教科書において分担執筆を行うなど、その執筆範囲は広範です。これらの著作は、歯内療法学、保存修復学、口腔組織学、象牙質知覚過敏症、接着歯学など、歯科保存治療に関連する主要な領域を網羅しており、多くの歯科医師や学生にとって重要な情報源となっています。特に、ライフステージと歯内療法といったテーマに関する編著は、患者の年齢や状態に応じたきめ細やかな治療の重要性を示唆しています。教育者、研究者、そして臨床家としての豊富な知識と経験が、これらの多岐にわたる著作に結実していると言えるでしょう。洗口液の活用に関する書籍の監修も行っており、日常臨床に役立つ情報の普及にも貢献しています。

興地隆史氏は、研究、教育、臨床、そして学会活動、著作活動と、歯科医学の発展と後進の育成に多方面から貢献し続けている、日本の歯科保存治療分野における第一人者の一人です。

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