興朝

興朝（こうちょう）は、明末清初の動乱期に、農民反乱の指導者として台頭した孫可望が、大西政権を引き継いだ際に使用した可能性があるとされる私年号です。この年号は、1646年から1647年の短い期間に用いられたと伝えられています。

しかしながら、この興朝という年号の存在については、確たる証拠に欠ける部分があり、歴史家の間でも意見が分かれています。

年号の出典について

興朝という年号に関する情報源としては、以下の資料が挙げられます。

李兆洛の『紀元編』：この書物では、興朝が孫可望によって使用されたとされています。ただし、この記述は後述する『明史』楊畏知伝を典拠としています。
『明史』巻279　列伝第167　楊畏知：この史料には、「孫可望は干支紀年を用い、『興朝通宝』を鋳造した」という記述がありますが、年号そのものについては言及されていません。
『清史列伝』：この史料も、『明史』と同様の記述にとどまっています。
『清史稿』巻248　列伝35　孫可望：この史料も、『明史』と同様に、年号についての記述はありません。

これらの資料を総合的に見ると、孫可望が「興朝」という年号を使用したという明確な記述は、『紀元編』以外には見当たらず、他の史料では干支紀年を使用した事実と「興朝通宝」という貨幣を鋳造したという記述にとどまっています。そのため、興朝という年号の存在は、他の史料からの裏付けがない状況です。

年号の存在を否定する見解

歴史研究者の李崇智は、自著『中国歴代年号考　修訂本』の中で、興朝という年号について「出典がない」ことを理由に、その存在を否定しています。これは、上記の資料の分析からも理解できる点で、興朝という年号が本当に存在したのかについては、さらなる検証が必要であることを示唆しています。

結論

興朝という年号は、孫可望が使用した可能性が指摘されていますが、確固たる歴史的証拠に乏しいのが現状です。一部の資料には年号の存在を示唆する記述があるものの、他の史料では具体的な言及がなく、専門家の間でも意見が分かれるため、その真偽は今後の研究に委ねられるところです。もし、興朝という年号が実際に使用されていたとしても、その期間は極めて短期間であったと考えられます。現状では、歴史的事実として確定するには、さらなる研究と新たな資料の発見が待たれる状況です。今後の研究によって、この年号の謎が解き明かされることが期待されます。

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