船体消磁

船体消磁についての解説

船体消磁（せんたいしょうじ、Deperming）は、主に軍艦の船体から不要な磁気を取り除く作業を指します。この操作は、潜水艦を含む軍艦にとって非常に重要であり、特に海上または海中での敵に発見されやすさや、磁気感応式機雷に反応するリスクを低減するために行われます。以下では、船体消磁に関連する技術やそのメカニズムについて詳しく説明します。

船体磁気の種類

船体磁気は、主に静磁気と動磁気の2種類に分類されます。

• - 静磁気はさらに誘導磁気と永久磁気に分かれます。
• - 動磁気は渦電流磁気と浮遊磁気に細分化されます。

また、船体磁気は3つの方向、すなわち縦方向（LM）、垂直方向（VM）、横方向（AM）に分解され、それぞれの特性に応じて変化します。

偶発的に発生する磁気の影響

• - 誘導磁気は、地磁気によって船体に付加され、その強さは船体の形状や向き、地磁気の影響を受けます。たとえば、船体が南北を向くと、誘導磁気が強まります。
• - 永久磁気は、建造時に船体が磁石のようになることで、鋼板の切断や溶接が起因しています。
• - 渦電流磁気は、アルミなどの金属が地磁気中で運動すると、それによって生じる誘導電流から生まれます。
• - 浮遊磁気は、発電機や主要な動力機関から発生します。

消磁のプロセス

海上自衛隊は、横須賀消磁所で定期的に船体の永久磁気を消去しています。特に水上鋼鉄艦艇の艦首艦尾方向における消磁作業は「デパーミング」と呼ばれています。これは、大きなコイルを船体外周に通し、電流の極性を変えつつ徐々に磁気を弱める手法を用います。
一方、潜水艦では、艦載消磁装置の消費電力を抑えるために、事前に船体に永久磁気を付与しています。また、潜水艦の垂直方向の消磁作業は「フラッシング」と呼ばれています。

艦載消磁装置の役割

艦載消磁装置は、消磁処理では取り除けなかった永久磁気や誘導磁気を中和します。調整作業は横須賀消磁所、佐世保磁気測定所や仮屋磁気測定所で実施され、敏感な磁気センサーによって船底の磁場を最小限に抑えるように設計されています。消磁装置のキャリブレーションと呼ばれるこの作業は定期的に行われています。

消磁コイルには方向に応じた名前が付けられています。具体的には、艦首艦尾方向のLコイル、横方向のAコイル、垂直方向のMコイル、艦首と艦尾の差を中和するF.G.コイルがあります。

磁場歪の影響

船体の磁気そのものではありませんが、鋼鉄製の艦体は地球の地磁気を乱すことがあります。艦体が地磁気の磁力線を集中的に受けるために、何もない海では均一な磁力線が鋼鉄艦と接することで乱れます。この現象は「磁場歪」と呼ばれ、軍用艦艇にとっては、敵の機雷による触雷の危険性を高めます。このため、掃海艇の多くは鉄製の船体を避け、プラスチックや木材の素材を用いる傾向にあります。

歴史的背景

第二次世界大戦初期、英国艦隊はドイツに敷設された磁気感応式機雷に困惑していました。その際、英海軍は船体外周に消磁コイルを設置し、初めて船体の磁気を取り除くことに成功しました。この成果が船体消磁技術の始まりです。

このように、船体消磁は現代の軍艦運用に不可欠な技術であり、そのメカニズムの理解は、より安全な海上作戦に向けた鍵となります。

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