船尾

船尾（せんび）は、船舶の最も後方部分を指す言葉で、一般的には「とも」や英語由来の「スターン」とも呼ばれます。この部分は、船の航行性能やデザインに大きく影響を与える重要な要素です。

船尾の形状とその種類

船尾の形状は、船の用途や設計思想によって多岐にわたります。代表的なものとして、以下の3つが挙げられます。

1. トランサムスターン
水線上の部分が途中で垂直に切り落とされたような形状をしています。これは平板状に処理されており、比較的シンプルな構造です。1920年代にイギリス海軍で、その速力と建造コストの効率性から広く採用されました。構造が単純なため、製造が容易で、特に高速を必要とする艦船や現代の小型ボートなどに多く見られます。

2. クルーザースターン
水線上の部分が丸みを帯びており、後方へ張り出した形状をしています。この形状は、船の航行時の安定性を高め、波の抵抗を減少させる効果があります。そのため、大型の客船やクルーザーによく採用されています。優雅な外観も特徴の一つです。

3. カウンタースターン
水線上の部分がある高さから、テーブルのように水平に張り出した形状をしています。この形状は、1840年から1920年頃に建造された帆船や古い商船でよく見られました。帆船時代には、船の安定性を保ち、舵の操作性を向上させるために採用されていました。歴史的な船舶に見られる独特なデザインです。

船尾灯について

船尾には、夜間や視界不良の状況下で他の船舶に自船の存在を示すための船尾灯（せんびとう）が設置されています。船尾灯は白色の灯火で、船の後方135度の範囲を照らすように設置されることが、海上衝突予防法などの規則で定められています。これにより、夜間航行時の安全性が確保されます。

その他の関連情報

船尾に関連する用語や概念は、船舶の構造や航行に関する理解を深める上で役立ちます。

船首（せんしゅ）：船の最前部のことを指し、船尾とは対義語にあたります。船首の形状も船の性能に影響を与えます。
舷（げん）：船の側面部分を指します。
とも座：船尾付近にある星座で、航海や天文学に関わる人々に知られています。
海上衝突予防法：船舶の航行に関する国際的なルールで、安全な航行を確保するための基準を定めています。船尾灯の設置基準もこの法律で定められています。
船内外機（スターンドライブ）：船の推進装置の一つで、船尾に取り付けられたエンジンとプロペラが一体となったものです。船の操縦性と推進効率の向上に貢献します。

船尾は、船舶の構造において重要な役割を担っています。その形状や機能は、船の航行性能、安定性、デザインに影響を与えるため、船舶設計において慎重に考慮される要素の一つです。また、船尾灯は、航行中の船舶の安全を確保する上で不可欠な設備であり、海上衝突予防法などの法規によってその設置基準が定められています。

もう一度検索