船水徳雄

船水 徳雄（ふなみず のりお）

船水徳雄は、1949年（昭和24年）に青森県弘前市で生を受けた日本画家です。幼少期に東京都渋谷区へと居を移し、やがて絵筆の道へ進みます。14歳で日本画の大家、佐藤太清に師事し、19歳からは児玉希望の画塾で研鑽を積みました。二人の師から受けた指導は、その後の画業の礎となりました。

画壇での評価と受賞歴

早くからその才能を認められ、主要な公募展で数々の栄誉に輝いています。1969年には第4回日春展に『バーバリーシープ』を出品し、初入選を果たしました。翌年の第5回展では『ピューマ』で奨励賞を受賞。日展にも初出品となる第2回展で入選し、1971年の第3回日展では『暦』で特選を受賞するという快挙を成し遂げました。その後も、1973年には日春展で『etranger』が日春賞を受賞、1975年には第7回日展で『間』により二度目の特選を受賞するなど、着実に評価を高めていきます。そして、1987年の第19回日展に出品した『晩夏』では、日展会員賞を受賞し、日本画壇における確固たる地位を確立しました。

写実表現とその世界観

船水徳雄の作品の最も顕著な特徴は、卓越した写実的な表現力にあります。人物はもちろんのこと、動物、昆虫、植物といった自然界のあらゆる生命体を、まるでそこに存在するかのような精密さで描き出します。しかし、その描写は単なる表面的な再現に留まりません。描かれた対象の内側に宿る生命の力強さ、あるいは儚さ、そして人々の営みや心の奥底にある感情、さらには日本独自の文化といった普遍的なテーマを、写実という手法を通して深く探求しています。特に人物画と、しなやかな姿態を持つ猫を主題とした作品は多く、見る者はそこに生命の本質に迫る画家の鋭い眼差しと、対象への温かい共感を見出すことができるでしょう。彼の作品は、写実でありながらも、精神性や情感を豊かに表現している点が特筆されます。

多岐にわたる活動

船水氏は、数多くの展覧会で作品を発表し続けています。現代日本新人作家展や山種美術館賞展などの企画展、濤濤会展や昴展といったグループ展に参加するほか、セントラル絵画館や武智鉄二の画廊、なんば髙島屋、日本橋東急、至峰堂画廊など各地で個展を開催してきました。中でも、猫を主題とした「猫だけの作品展」や「船水徳雄素猫譜展」は多くの愛猫家や美術ファンから注目を集めました。活動の場は国内に留まらず、1991年には中国北京故宮博物院での「現代日本繪畫展」、1992年にはスペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリアミュージアムでの「バルセロナ日本画美術展覧会」にも出品しています。また、内外タイムスや報知新聞で武智鉄二の小説の挿絵を手がけるなど、メディアを通じた表現活動も行いました。1994年には、自身の技法を紹介する書籍『日本画の技法第10巻 船水徳雄「女性」を描く』（同朋舎出版）が刊行され、多くの日本画学習者にとって貴重な資料となっています。さらに、作品『天平眩夢』が中学校の国語教科書に掲載されるなど、次世代の育成にも間接的に貢献しています。2006年には、自身の作品を展示するための個人ギャラリー「猫のあじと」を東京都目黒区に開設し、作品発表と交流の拠点としています。近年も、森アーツセンターギャラリーでの「北原照久の超驚愕現代アート展」や、東日本大震災の復興支援を目的とした「被災地救援アートで応援作品展」などに参加し、精力的な活動を続けています。

現在の活動

現在、船水徳雄氏は東京都立川市に在住し、創作活動に励んでいます。それに加えて、後進の指導や美術振興にも力を注いでおり、福知山市佐藤太清賞公募美術展の常任審査員や文京区展の主席審査員を務めています。また、文京区教育委員会の生涯学習センターで講師として日本画を教えるなど、教育者としても貢献しています。その写実的な表現力と、描く対象への深い洞察力は、現代日本画壇において独自の光を放っています。

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