船津和平工作

船津和平工作について

概要

船津和平工作（ふなつわへいこうさく）は、1937年に発生した盧溝橋事件の結果悪化した日中関係を改善し、戦争の拡大を防ぐために行われた和平の試みです。この工作は日本の実業家で元外交官の船津辰一郎を媒介とし、外交交渉を通じて事態を収拾しようとしました。

背景

1937年7月7日、北京近郊の盧溝橋で発生した事件により、日中間の関係は急速に悪化しました。中国共産党は全面的な抗戦を呼びかけ、一方で、日本側も現地軍に対して武力行使を避けるよう指示しました。事態は一時停戦状態となりましたが、中国政府からの抗議や事態の拡大を求める動きが見られました。

日本政府は、これまでのように現地解決方式を採用し、この事件を処理しようとしました。この方式は、正規の外交交渉を通じずに現地の軍力によって問題を解決するものでした。しかし、中国側はこのやり方を否定し、国民政府は日本側の軍事行動に対抗する姿勢を強めました。

船津工作の展開

事態が緊迫する中、日本の外交当局は、戦争の全体化を避けつつ、和平交渉の可能性を模索するようになりました。その中で、陸軍、海軍、外務省の関係者が協議を重ね、船津辰一郎に和平案の伝達を託しました。外交交渉による解決を促す案が形成され、昭和天皇の了承も得ることができました。

船津は、華北の和平を主導する役割を果たしましたが、個人としての接触によって柔軟に交渉を進めるという形でした。この工作は非公式なものであり、日本政府が現地軍の行動を完全に掌握できていないことを示すものでした。

船津は8月4日に東京を出発し、8月7日に上海に到着しました。彼は中国側の有力者に接触し、和平の重要性を説きましたが、同時期に日中間で新たな衝突が起きるなど状況は厳しさを増しました。

特に、8月13日に発生した第二次上海事変によって、和平の試みは大きな打撃を受けました。国民政府外交部長が抗日へと方針を転換したことで、船津の努力は水泡に帰し、結果的に全面戦争へと進展しました。

結論

船津和平工作は、日中戦争へ向かう流れの中で、和平を希望したにもかかわらず、戦火の広がりを抑えることには成功しませんでした。この工作は、日本国内における軍と政府の間の意見対立や、外部の圧力が複雑に絡み合っていたことが影響し、大きな結果を生むことには至りませんでした。最終的には、上海での大規模な戦闘によって、この和平交渉は完全に消失してしまったのです。

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