良性発作性頭位めまい症

良性発作性頭位めまい症（BPPV）とは

良性発作性頭位めまい症（BPPV）は、頭の位置を変えることで誘発される、比較的短い時間の回転性めまいを特徴とする病気です。1921年にバーラーニによって報告され、めまい専門外来では、末梢性めまいの約40%を占めるとされています。

症状

特定の頭位をとる、または頭位を変換した際に、数秒から1分未満の回転性めまいが生じます。めまいは、頭を動かさずに安静にしていると治まりますが、再び頭位を変えると再発することがあります。吐き気を伴うこともありますが、難聴や耳鳴りなどの聴覚症状は見られません。

原因

主な原因は、耳石という内耳にある小さな結晶が、本来あるべき場所から剥がれて、三半規管内に入り込んでしまうことです。以前は耳石がクプラに付着することが原因と考えられていましたが、現在では半規管内での耳石の浮遊が原因とされています。

耳石が剥がれる原因としては、以下のものが考えられます。

加齢
耳の感染症
頭部や耳の怪我
長期間の床上安静
耳の手術
メニエール病などの内耳の病気
内耳につながる動脈の閉塞

診断

以下の症状がある場合、BPPVが疑われます。

頭を動かした時のみめまいが起こる
じっとしていると30秒以内にめまいが止まる
何度も頭を動かしていると、めまいが軽くなる

診断を確定するためには、Nylen-Barany試験やDix-Hallpike testなどの検査が行われます。これらの検査では、特定の頭位をとることでめまいや眼振が誘発されるかを確認します。

鑑別診断としては、前庭神経炎やメニエール病などの他の末梢性めまい、脳幹梗塞や小脳梗塞などの中枢性めまいが挙げられます。また、循環不全によるめまいや、てんかんとの鑑別も重要です。

治療

BPPVの治療は、半規管内に入り込んだ耳石を元の場所に戻すことを目的とします。最も一般的な治療法は、エプリー法と呼ばれる浮遊耳石置換法です。この方法は、特定の頭位を順番にとることで、耳石を半規管から卵形嚢に戻します。

めまいが起こる頭位を避けて安静にするのではなく、あえてその頭位をとることで症状が改善していくこともあります。

漢方薬としては、苓桂朮甘湯や五苓散などが用いられることがあります。

予後

BPPVの予後は一般的に良好で、適切な治療により症状は改善します。

診療科

BPPVの診療は、主に耳鼻咽喉科で行われます。不安が強い場合には、精神科への相談も検討されます。

参考文献

植村研一『頭痛・めまい・しびれの臨床―病態生理学的アプローチ』医学書院
日本めまい平衡医学会
* 良性発作性頭位めまい症 MSDマニュアル家庭版

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