色差

色差：色の違いを測る指標

色差とは、2つの色の間の違いを数値で表す指標です。色の違いが大きいほど色差は大きくなり、区別しやすくなります。逆に、色差が小さいほど色の違いは小さく、区別しにくくなります。

従来、色の違いは人間の感覚によって評価されていましたが、色差を用いることで、定量的に評価できるようになりました。これは、色の正確な管理や判定において非常に重要です。色差は通常、デバイス非依存の色空間（例えばCIELAB色空間）におけるユークリッド距離で定義されます。

ユークリッド距離による色差計算

多くの色差式は、色空間における距離に基づいています。最も単純な方法は、RGB色空間におけるユークリッド距離を用いる方法です。RGB値を(R1, G1, B1)と(R2, G2, B2)とする2つの色について、ユークリッド距離による色差distanceは次式で計算できます。

\( distance = \sqrt{(R_2 - R_1)^2 + (G_2 - G_1)^2 + (B_2 - B_1)^2} \)

計算を簡略化するために、平方根を取り除いて二乗距離を計算することもあります。

\( distance^2 = (R_2 - R_1)^2 + (G_2 - G_1)^2 + (B_2 - B_1)^2 \)

この単純な式は、2つの色の類似性を評価するのに役立ちますが、人間の視覚特性を考慮していません。人間の視覚は、RGBの各成分に対して均等に敏感ではありません。そのため、より正確な色差を計算するためには、重み付け係数を導入する必要があります。例えば、次の式は、人間の視覚特性をある程度考慮した色差式です。

\( distance = \sqrt{2\times\Delta R^2 + 4\times\Delta G^2 + 3\times\Delta B^2} \)

ここで、\(\Delta R = R_2 - R_1\)、\(\Delta G = G_2 - G_1\)、\(\Delta B = B_2 - B_1\)です。

さらに洗練された色差式としては、CIELAB色空間を用いたものが挙げられます。

CIELAB色空間と色差式

国際照明委員会（CIE）は、色差をΔEab（またはΔE, dE, dE、あるいは「デルタE」）と定義しています。これは、人間の視覚特性をより良く反映した色空間であるCIELAB色空間における距離を表しています。

CIE76 (delta E76)

CIE76は、最初に定義された色差式です。CIELAB座標(L1, a1, b1)と(L2, a2, b2)の2つの色について、色差は次式で計算されます。

\( \Delta E^_{ab} = \sqrt{(L^_2 - L^_1)^2 + (a^_2 - a^_1)^2 + (b^_2 - b^_1)^2} \)

しかし、CIE76は、特に彩度が高い領域で知覚的均等性が低いことが明らかになり、後続の色差式に置き換えられました。

CIE94 (delta E94)

CIE94は、CIE76を拡張し、知覚的非均等性に対応するために重み付け係数を導入しました。色差は次式で計算されます。

\( \Delta E^_{94} = \sqrt{\left(\frac{\Delta L^}{k_L S_L}\right)^2 + \left(\frac{\Delta C^_{ab}}{k_C S_C}\right)^2 + \left(\frac{\Delta H^_{ab}}{k_H S_H}\right)^2} \)

ここで、kL, kC, kHは重み係数、SL, SC, SHはスケールファクターであり、\(\Delta L^\), \(\Delta C^_{ab}\), \(\Delta H^_{ab}\)はそれぞれ明度、彩度、色相の差です。これらの係数は、用途によって異なります。

CIEDE2000 (delta E00)

CIEDE2000は、CIE94の知覚的均等性をさらに改善するために、色相回転項や補正項を追加した色差式です。数式は複雑ですが、より正確な色差を計算することができます。

\( \Delta E^_{00} = \sqrt{\left(\frac{\Delta L'}{k_L S_L}\right)^2 + \left(\frac{\Delta C'}{k_C S_C}\right)^2 + \left(\frac{\Delta H'}{k_H S_H}\right)^2 + R_T \frac{\Delta C'}{k_C S_C} \frac{\Delta H'}{k_H S_H}} \)

ここで、\(\Delta L'\), \(\Delta C'\), \(\Delta H'\)は補正された明度、彩度、色相の差、RTは色相回転項です。

色差の許容値

許容値は、「基準色と区別できないほど近い色」の範囲を定義します。知覚的均等性が満たされていれば、許容値は単純に「丁度可知差異以内」となります。しかし、知覚的均等性が満たされていない場合は、許容値は複雑な関数になります。例えば、CIE1931色空間では、一定の明度における許容値はマクアダムの楕円として表されます。

色差の計算方法や許容値は、用途や目的に合わせて適切に選択する必要があります。様々な色差式が存在するため、それぞれの特性を理解し、最適な式を選択することが重要です。

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