芙蓉 (駆逐艦)

芙蓉（ふよう）

旧日本海軍が運用した駆逐艦の一隻で、若竹型駆逐艦の7番艦として建造されました。この艦型は、第一次世界大戦後に整備された小型駆逐艦であり、当時の艦艇整備計画に基づいて多数が建造されました。

建造と命名

芙蓉は、藤永田造船所において建造が進められ、大正11年（1922年）9月に無事進水しました。進水当初に与えられた名称は「第十六駆逐艦」という番号名でした。当時の日本海軍では、駆逐艦の命名規則が変更される過渡期にあり、本艦もその影響を受けます。

翌大正12年（1923年）3月16日、艦は無事に竣工し、就役しました。その後、大正13年（1924年）4月1日には「第十六号駆逐艦」と表記が変更され、さらに昭和3年（1928年）8月1日には、ようやく固有名詞である「芙蓉」という艦名が正式に与えられました。この命名により、番号ではなく花の名前を持つ駆逐艦として識別されることとなります。

戦歴

芙蓉は就役後、主に沿岸警備や訓練任務に従事しました。昭和12年（1937年）に日中戦争が勃発すると、本艦も実戦に投入されます。主に中国南部の沿岸域における作戦に参加し、陸上部隊の支援や海上交通路の確保などに貢献しました。

太平洋戦争が始まった昭和16年（1941年）も、芙蓉は引き続き駆逐艦として現役でした。緒戦から終戦近くまで、本艦の主な任務は、当時の戦況において極めて重要であった船団護衛および哨戒任務でした。広大な戦域に展開する日本軍にとって、補給物資や人員を輸送する船団の安全確保は死活問題であり、小型ながらも機動力を持つ駆逐艦はその最前線で活躍しました。芙蓉もまた、厳しい海上状況や敵潜水艦の脅威に晒されながら、これらの任務を遂行しました。

最期

昭和18年（1943年）に入ると、太平洋戦争の戦況は日本にとって厳しいものとなっていきます。このような状況下でも、芙蓉は船団護衛任務を継続していました。

そして昭和18年12月20日、芙蓉はフィリピン諸島のマニラ湾口付近を航行中、アメリカ海軍の潜水艦「パファー (USS Puffer, SS-268)」によって捕捉されました。パファーからの魚雷攻撃を受けた芙蓉には、少なくとも2本の魚雷が命中したと記録されています。魚雷の命中により、芙蓉は致命的な損害を受け、奮闘むなしくその場で沈没しました。これにより、本艦の艦歴は閉じられることとなりました。

歴代艦長

芙蓉の艦長としては、竣工時の柏木英少佐をはじめ、多数の海軍士官が歴任しました。彼らはそれぞれの在任期間において、艦の指揮を執り、訓練や実戦任務を遂行しました。駆逐艦という小型艦は、艦長の指揮能力が特に問われる艦種であり、歴代の指揮官たちは芙蓉とその乗組員を率いて任務にあたりました。

参考文献

本記事の作成にあたっては、『聯合艦隊軍艦銘銘伝』『日本海軍史 第7巻』『艦長たちの軍艦史』などを参照しました。これらの文献には、芙蓉の建造経緯、戦歴、そして歴代艦長に関する詳細な記録が含まれています。

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