芝原上水

芝原上水：福井を潤す歴史的な用水路

芝原上水（しばはらじょうすい）は、福井県吉田郡永平寺町と福井市を流れる用水路で、九頭竜川から取水しています。芝原用水（しばはらようすい）とも呼ばれています。

上水としての歴史

開設の背景

福井城下は地下水に鉄分が多く、飲料水として適していませんでした。そのため、1601年（慶長6年）、福井藩の国家老であった本多富正によって、城下の武家や町人のための上水路が建設されました。これは、福井藩初代藩主である結城秀康が、北庄築城の際に本多富正に命じたと伝えられています。元々灌漑用水として使われていた旧北庄用水を拡充・整備したものです。

取水口は志比堺村に設けられ、九頭竜川から幅三間の水路で城下まで引かれました。主に福井城下に住む人々の飲料水として利用されたほか、約4万石の水田を潤す農業用水としても重要な役割を果たしました。そのため、水の衛生を保つための厳しい法令や規則が設けられていました。

厳格な管理体制

福井城下では、地下水の鉄分が多いため、芝原上水は貴重な飲料水源でした。福井藩は上水を直轄で管理し、御目付の監督下に上水奉行を置き、配下の足軽に見回りをさせていました。上水の清浄を保つため、川筋の各所に禁制事項を記した制札を建て、違反者には過料を科しました。

1849年（嘉永2年）の記録によると、芋や小鰈を洗っただけで銀5匁、洗濯をすると銀20匁という高額な過料が徴収されたことがわかります。これらの記録は、当時の上水管理の厳しさを物語っています。

浅井政昭という人物が、1849年（嘉永元年）4月から目付上水掛として着任し、それ以前の記録をまとめた「上水掛旧例考」や、着任後の記録である「上水掛近例考」を編纂しました。これらの詳細な記録から、藩が上水を厳重に管理していた様子が伺えます。

グリフィスが見た芝原用水

1871年（明治4年）には、アメリカ人宣教師のグリフィスが、福井での滞在記『グリフィス越前日記』に芝原上水について記述しています。彼は、住民が食器や衣類を洗う時間が決められていたこと、子どもたちが水路で遊んでいたこと、自身が用水路で溺れた幼児を助けた経験などを記録しています。これらの記述から、当時の人々の生活と用水路が密接に結びついていたことがわかります。特に一乗町周辺は末流にあたり、日中は食器や衣類の洗濯が可能でした。

用水としての変遷

明治・大正期の管理

明治時代に入っても、芝原用水は福井市民にとって重要な飲料水源でした。そのため、用水の衛生を保つための様々な施策が継続されました。廃藩置県後、用水管理は委員制となり、1885年（明治18年）に水利土功会が設置されたのにあわせて吉田郡の管理となりました。1890年（明治23年）には「水利組合条例」に基づき、33名の委員による芝原用水組合が設置されました。

用排水化と上水道の普及

1868年（明治元年）には、三の丸・四の丸の堀が埋め立てられ、その後も外堀や中堀が次第に埋められていきました。市街地の水路改修が進み、光明寺用水や四ヶ用水が開設されると、芝原上水は灌漑用水としての役割を担うようになりました。

1924年（大正13年）8月、福井市に上水道が整備されたことで、芝原上水は飲料水としての役割を終え、完全に灌漑用水としての役割を担うようになりました。

昭和以降の転換

鳴鹿堰堤建設事業

1946年（昭和21年）に国営農業水利事業制度が発足し、1947年（昭和22年）に国営九頭竜川地区農業水利事業に採択されたことで、九頭竜川に鳴鹿堰堤が建設されました。この事業では、九頭竜川に6か所あった取水口を統合することが計画されました。1955年（昭和30年）3月に鳴鹿堰堤が完成し、ここから十郷用水と芝原用水が取水されるようになりました。

現在の経路

芝原上水は、現在、永平寺町志比堺で九頭竜川から取水され、福井市中ノ郷町にある通称「二タ口」で内輪用水と外輪用水に分かれます。外輪用水は、福井市堂島町でさらに分かれ、五ヶ用水、九ヶ用水、掟九ヶ用水となります。内輪用水は、東藤島村、円山東村などを経て志比口で二つに分かれ、そのうちの一つの流れは、福井城郭内へ引き込まれ、侍屋敷の飲料水や泉水として利用された後、城下へ流れ出て灌漑に利用されました。もう一つの流れは、松本四ツ辻で3本に分かれ、江戸町や松本町、三上町の町屋敷の飲料水に利用されました。

川上神社と水車

芝原上水が城用水と定められた頃、白山の麓の美津波能売命と大野郡女神川の瀬織都姫命を祀る祠が建てられ、後に大己貴命と伊弉册命を合祀して川上神社となりました。この川上神社がある志比口は、上水が城郭に入る本流と市街に流れる支流の田原用水に分かれる場所であるため、「二タ口」と呼ばれています。また、この付近では、福井藩の製造局が洋式銃を製造した場所でもあり、後に芝原用水の水車を利用して動力を活用していました。

ギャラリー

[取水口から川上神社までの写真ギャラリー]
[川上神社から養浩館庭園、宝永地区までの写真ギャラリー]
[福井市春山地区、湊地区の写真ギャラリー]

まとめ

芝原上水は、福井の歴史と人々の生活に深く関わってきた重要な用水路です。その歴史と役割を理解することで、福井の文化と生活をより深く知ることができます。

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