花咲か爺

花咲か爺：幸福と不幸を分けた犬の力

日本の民話として広く知られる「花咲か爺（はなさかじじい）」は、室町時代末期から江戸時代初期にかけて成立したと推測されています。「花咲かじいさん」「花咲かじい」とも呼ばれ、「動物報恩」と「隣の爺型」という昔話の分類に属します。この物語は、心優しい老夫婦と、彼らの隣に住む欲深い老夫婦、そして不思議な能力を持つ一匹の犬を中心に展開します。

物語の舞台となるのは、静かな山里。そこに住む老夫婦は、心優しく、周囲の人々からも好かれていました。一方、隣に住む老夫婦は、欲深く、乱暴な性格でした。ある日、老夫婦は傷ついた子犬を拾い、わが子のように大切に育てます。

ある日、子犬が畑で「ここ掘れワンワン」と鳴き始めました。不思議に思った老人は、鍬でその場所を掘ってみると、金貨が大量に出てきました。老夫婦は喜び勇んで、近所の人々にその金貨を分け与えました。

この様子を羨ましく思った隣人夫婦は、老夫婦から犬を無理やり奪い取ります。彼らは、犬を使って財宝を見つけ出そうと、犬を虐待しながら、財宝のありかを聞き出そうとします。しかし、犬が指し示した場所からは、がらくたばかりが出てくるばかりでした。怒り狂った隣人夫婦は、犬を殺してしまいます。さらに、老夫婦にも悪態をつき、彼らの悲しみをさらに深めました。

老夫婦は、わが子同然だった犬を失い悲しみに暮れます。彼らは犬を庭に埋葬し、墓標として木を植えました。不思議なことに、その木はみるみるうちに大木に成長しました。ある夜、老夫婦は夢の中で犬に会い、その木を伐って臼を作るように言われます。

老夫婦は言われた通りに臼を作り、餅をつくと、臼からは大量の財宝が流れ出てきました。このことを知った隣人夫婦は、再び老夫婦に難癖をつけ、臼を借りようとします。しかし、隣人夫婦が臼で餅をつくと、出てくるのは汚物ばかりでした。激怒した隣人夫婦は、臼を斧で割り、薪にして燃やしてしまいました。

老夫婦は、臼の灰を大事に持ち帰りました。再び夢の中に犬が現れ、桜の枯れ木に灰を撒くようにと指示します。老夫婦が指示に従うと、枯れ木は満開の桜に変わりました。

たまたま通りかかった大名は、この光景に感動し、老夫婦を褒め、褒美を与えます。一方、隣人夫婦は同じことを真似ようとしますが、大名の目に灰が入ってしまい、無礼を咎められて罰せられました。

この物語は、地方によって様々なバリエーションがあります。犬の由来や、臼を作る過程、大名からの褒美の内容など、地域によって異なる描写が見られます。また、近年では、絵本やアニメなどで、物語の解釈や結末が改変されているものも見られます。

「花咲か爺」は、勧善懲悪の物語としてだけでなく、人々の幸福や貧富、そして自然の力や不思議な現象といった様々なテーマを含んでいます。その魅力は、時代を超えて人々の心を捉え続けています。さらに、1901年には唱歌「花咲か爺」も作られ、広く親しまれています。この唱歌は、物語の内容を簡潔に表現しており、多くの人々に愛唱されています。 この物語は、現代においても、様々な形で語り継がれ、人々に感動を与え続けているのです。

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