花壇橋

仙台城下の架け橋：花壇橋の歴史

仙台市青葉区を流れる広瀬川には、江戸時代初期、重要な役割を担った花壇橋が存在しました。現在の青葉区花壇と川内追廻を繋いでいたこの橋は、仙台城の大手門に直結する仙台橋（大橋）から数百メートル下流に位置していました。

川内追廻は青葉山の麓、広瀬川沿いに東西に細長く伸びる地区です。一方、花壇地区は広瀬川の屈曲部に三方を囲まれた、同じく東西に細長い地域で、東側は他の地域と地続きになっています。

花壇橋は、伊達政宗の時代に架けられたと伝えられています。政宗は花壇地区に屋敷を構え、滞在することが多かったため、城との行き来を容易にするために橋を架けたという説が有力です。 同時に、大橋に迫る敵軍に対して側面からの攻撃を可能にする軍事的な役割も担っていたという見解もあります。

橋の長さは約200間（約360メートル）にも及び、独特の構造を持っていました。いわゆる「廊下橋」と呼ばれるもので、屋根と壁で覆われており、通行人が外から見えないようになっていたと考えられています。この設計は、通行者の安全確保や、軍事上の機密保持といった目的があったのかもしれません。

しかし、花壇橋は長くその役割を果たし続けることはありませんでした。元和3年（1617年）4月10日、大規模な洪水が発生し、仙台橋とともに流失してしまいます。その後、仙台橋は再建されましたが、花壇橋は再び架け替えられることはありませんでした。

花壇橋が復旧されなかった理由としては、いくつかの要因が考えられます。一つは、泰平の世が続き、軍事的な重要性が低下したことです。また、仙台城ではこの頃、二の丸が築造され、政治の中心が本丸から移り変わっていきました。本丸の重要性が低下したことも、花壇橋の再建が優先されなかった要因の一つでしょう。

花壇橋は、仙台の歴史を語る上で重要な存在でした。その存在は、伊達政宗の治世、仙台城下の発展、そして時代の変化を反映しています。現存しない橋ではありますが、歴史資料や文献からその姿を偲び、仙台の歴史を紐解く上で重要な手がかりとなっています。

花壇橋に関する主な参考文献

作者不明『仙台鹿の子』（元禄8年（1695年）成立、仙台市史編纂委員会編『仙台市史』第8巻（資料篇1）に収録、仙台市役所、1953年）
仙台市史編纂委員会『仙台市史』第1巻（本篇1）、仙台市役所、1954年
仙台市史編さん委員会『仙台市史』通史編3（近世1）、仙台市、2001年
宮城県文化協会『仙台城歴史散策』、1988年
* 松村博『日本百名橋』、鹿島出版社、1998年、ISBN 4-306-09355-7

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