川内追廻

川内追廻地区：消えゆく城下町の物語

仙台市青葉区に存在した川内追廻地区は、江戸時代から現代に至るまで、激動の時代を反映する興味深い歴史を秘めていました。かつては仙台城の防衛を担う重要な拠点であり、約4000人の人々が暮らす賑やかな場所でしたが、2023年、最後の住民が移転し、その歴史に幕を閉じました。

仙台城と深く関わる歴史

川内追廻地区は、仙台城三の丸の東側、広瀬川の右岸に位置していました。江戸時代には、仙台城を守る上で重要な役割を担っており、片倉家などの有力な家臣の屋敷や、馬場、厩などが立ち並んでいました。城下町として栄え、人々の生活が営まれていた様子が伺えます。

明治維新後、仙台城に第二師団が置かれると、既存の建物は取り壊され、射撃場や練兵場、競馬場などに転用されました。また、青葉軌道による電車計画も構想されましたが、実現には至りませんでした。

戦後復興と公園計画

第二次世界大戦後、戦争の被害を受けた人々を収容するため、追廻練兵場跡地に約620戸の応急住宅が建設されました。これが「追廻住宅」です。住宅営団の解散後、住民は建物を買い取り、生活を続けました。しかし、1946年には青葉山一帯が公園用地として都市計画が決定。国と仙台市の間で土地の移転交渉が長年にわたって続けられました。

下水道や都市ガスの整備が遅れる中、1970年代に入ると、仙台市は住宅の新築や増改築を容認する方針を転換。住宅金融公庫の融資も受けられるようになり、新たな居住者が増え、問題が複雑化していきました。

移転と最後の1軒

国と仙台市の土地移転交渉は難航しましたが、2006年には大半の賃貸借契約が終了。2011年には集団移転先となる市営住宅が完成しましたが、一部住民は退去を拒否しました。2020年には、追廻地区を含む土地が仙台市に無償貸与される契約が締結され、2023年の全国都市緑化フェアのメイン会場となることが決定しました。

2022年9月、最後の1世帯が仙台市の補償に応じ、移転に同意。2023年2月には最後の住宅が解体され、4月から6月には全国都市緑化フェアが開催されました。その後も、「仙臺緑彩館」のオープンなど、青葉山公園の整備事業が進められています。

川内追廻の現在

かつて600世帯以上、4000人以上が暮らしていた川内追廻地区は、長い歴史を経て、2023年に完全に姿を消しました。その跡地は、青葉山公園として整備が進められており、仙台市民の憩いの場として新たな役割を担っています。しかし、その土地には、かつて人々の生活があった歴史が刻まれています。

まとめ

川内追廻地区は、仙台城の歴史、戦後の復興、都市開発など、さまざまな歴史的出来事を背景に、激動の時代を歩んできました。最後の住民の移転によって、物理的には存在しなくなりましたが、その歴史は、仙台の歴史の一部として語り継がれていくことでしょう。 この地区の変遷は、日本の高度経済成長期から現代までの社会変化を象徴する事例と言えるかもしれません。残された記録や証言を大切に、この歴史を後世に伝えていくことが重要です。

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