花山信勝

花山信勝：仏教と人間を見つめた生涯

花山信勝（1898年 - 1995年）は、仏教学者、浄土真宗の僧侶であり、東京大学名誉教授です。石川県金沢市に生まれ、東京帝国大学で印度哲学科を卒業後、日本仏教史を専攻しました。

仏教学者としての業績

東洋大学教授を経て、東京大学文学部教授、國學院大學教授を歴任。仏教学者として数々の業績を残しました。1935年には『聖徳太子御製法華経義疏の研究』で学士院恩賜賞を受賞。1942年には、学位論文『勝鬘経義疏の上宮王撰に関する研究』で文学博士号を取得しています。

巣鴨拘置所教誨師としての活動

花山の名を知らしめたのは、太平洋戦争後、巣鴨拘置所の教誨師としての活動です。1946年2月から東大教授を務める傍ら、A級戦犯が収容されていた巣鴨拘置所で教誨師を務め、東條英機ら7人のA級戦犯の処刑に立ち会いました。その時の模様は、『平和の発見：巣鴨の生と死の記録』に記録されています。東條英機が「米国憲兵と一緒に合掌するのも仏縁だね」と語ったエピソードは、彼の著作を通じて広く知られています。重光葵の手記『巣鴨日記』には、収監されていた人々にとって、花山との交流が心の救いになったという記述があります。

著作と思想

花山は、仏教の研究を通じて平和を希求し、人間の心の奥底にある普遍的なものを探求しました。

主な著書として、

『平和の発見 巣鴨の生と死の記録』
『万世を照らすもの：仏教学徒の記録』
『永遠への道：わが八十年の生涯』
『聖徳太子と憲法十七条』
* 『太平洋戦争とお念仏』

などがあります。

『平和の発見』は、戦犯という特殊な立場に置かれた人々の人間性を描き出し、戦争の悲惨さと平和の尊さを訴えた作品として、今も読み継がれています。

家族と晩年

宗門においては、金沢市の浄土真宗本願寺派・宗林寺住職を務めました。長男の花山勝道も宗林寺の住職、次男の花山勝友も仏教学者として、父の跡を継ぎました。1995年3月20日、96歳で逝去。

花山信勝は、仏教学者として、また教誨師として、人間の生と死、平和と戦争という根源的な問題に向き合い、その思索と行動は、現代に生きる私たちにとっても深い示唆を与えてくれます。

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