花畑屋敷跡

花畑屋敷跡とは

花畑屋敷跡は、熊本市中央区花畑町に位置する、江戸時代の熊本藩主の屋敷跡です。この地は、肥後国を治めた加藤氏、そして細川氏の居館として利用され、当時の史料には「御花畠」と記されています。都市化が進んだ現代においても、屋敷の南西部にあった庭園の一部が花畑公園として残り、市民に緑を提供しています。

花畑屋敷の歴史

加藤清正による築造

花畑屋敷は、慶長15年（1610年）頃、加藤清正によって坪井川左岸に築かれました。当初は、遊興のための庭園付きの屋敷として作られ、美しい庭園や数寄屋が建てられました。清正は、平山城である熊本城の本丸では大規模な池泉を造ることが難しかったため、この場所に本格的な庭園を造営したと考えられています。

細川氏による利用と改修

寛永9年（1632年）、細川氏が肥後に入国し、当初は熊本城本丸を居館としていましたが、寛永13年（1636年）には花畑屋敷を常の御殿と定めました。細川氏は、庭園や建物の改修・増築を重ね、この屋敷を藩主の居所として幕末まで使用しました。屋敷の周囲は約1,000mあり、敷地面積は約5haの広さを誇っていました。

明治維新以降

明治2年（1869年）に新しい屋敷が建てられましたが、翌年には藩庁が移転し、明治4年（1871年）の廃藩置県で鎮西鎮台の本営となりました。明治10年（1877年）の西南戦争で全焼した後、歩兵第23連隊の兵舎用地として利用されました。連隊の移転後、跡地は官庁や会社の用地に転用され、昭和4年（1929年）に屋敷の庭園の一部が花畑公園として整備されました。

現代の公園整備

2012年、熊本市は桜町・花畑地区の再開発事業において、花畑公園を含むオープンスペース「花畑広場」を整備する基本構想を策定しました。2020年1月に着工し、2021年4月には花畑公園が先行して開放され、防災機能を持つ公園として生まれ変わりました。

花畑屋敷の沿革

代継神社との関係

花畑屋敷の場所は、もともと代継神社（四木社）があった場所でした。現在も公園内には、市指定天然記念物である「代継宮跡大クスノキ」と神社碑が残っています。加藤清正による河川改修工事によって、この一帯は惣構えの一部として侍屋敷が造成されました。

加藤清正時代の庭園

慶長15年（1610年）には、花畑屋敷の造成工事がほぼ完了し、建築工事が開始されました。『続撰清正記』によると、清正は「花畑」と名付けた場所に、花を植え、泉水を掘り、山を築き、風流を凝らした数寄屋を建てたとされています。清正は、熊本城本丸の狭さを補うため、坪井川南岸に大規模な庭園を造営しました。

細川氏による改修

元和年間の一国一城令によって廃城となった矢部の愛藤寺城の材木を用いて「華畑ノ亭」を造ったという説もありますが、愛藤寺城の廃止は清正の死後です。

寛永9年（1632年）に細川忠利が熊本藩主となると、花畑屋敷は一時的な居所となりました。寛永13年（1636年）には、本丸御殿が不便という理由で、花畑屋敷が藩主の常の居所となりました。その後、細川氏によって作事や作庭が重ねられ、寛永15年（1638年）には庭園が完成したとされています。屋敷の東側には馬の調練場があり、寛文7年（1667年）には屋敷の西側の改築が行われました。

屋敷の構造と庭園

永青文庫に残る絵図によると、御広間・御書院・御座の間・御居間といった主要な殿舎の配置は共通しており、雁行型ではなく東西に並列的な配置が特徴です。庭園は池泉を中心とした回遊式庭園で、御風呂屋、御地震屋、御物見などが設けられ、遊興の要素が強く、離れとして萱書院や三階書院、仏堂、秋葉社などが配されていました。現在公園として残る場所は、当時、樹木が鬱蒼と茂っていた場所にあたります。

花畑屋敷は、加藤氏と細川氏という二つの大名家によって利用され、熊本の歴史において重要な役割を果たした場所でした。現在の花畑公園は、その歴史を今に伝える貴重な場所となっています。

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