花街の母

金田たつえ「花街の母」：苦難を乗り越え、国民的演歌へ

金田たつえのシングル「花街の母」は、1973年6月10日に日本コロムビアから発売されました。民謡歌手として活動していた金田たつえが、恩師の反対を押し切って演歌に挑戦した、彼女の人生と深く結びついた作品です。

誕生秘話：自身の人生と重なる歌詞

作詞は、夫の知人であったもず唱平が担当しました。偶然にも、出来上がった歌詞は、金田たつえ自身の境遇と重なるものでした。生後間もなく養女に出され、育ての母は北海道で芸者をしていました。母に民謡を教えられ、歌手を目指して上京した金田たつえにとって、歌詞は母への想いと重なり、涙なしには歌えないものだったと言います。

苦難の船出：大阪限定発売からの大逆転

しかし、恩師の反対は根強く、レコード会社も支援に消極的でした。「花街の母」は大阪地区限定で自主発売されることになり、宣伝費用もほとんどないという厳しい状況からのスタートでした。

金田たつえは諦めませんでした。「何年かかっても、この曲を世に出したい」と決意し、地道なキャンペーン活動を続けました。キャバレーを回り、店頭で歌い、魚河岸で早朝キャンペーンを行うなど、多い日には1日に24軒もの店を回ったそうです。その距離は、日本列島を2周半もするほどだったと言います。

大ヒット：国民的演歌として愛される

地道な努力が実を結び、発売から4年後の1977年には全国発売が実現しました。そして、発売から6年目に「花街の母」は全国的な大ヒットとなり、15年間で250万枚以上を売り上げました。1979年の年間シングルチャートでは第16位を獲得し、同年の『第30回NHK紅白歌合戦』に初出場を果たしました。その後も数々の賞を受賞し、テレビドラマ化、映画化もされるなど、社会現象を巻き起こしました。

収録曲

SIDE A:
花街の母

SIDE B:
情知らずの紅椿

両曲とも、作詞：もず唱平、作曲：三山敏、編曲：山路進一

映画・テレビドラマ

「花街の母」は、映画やテレビドラマにもなりました。映画版では松尾嘉代、古手川祐子らが出演し、テレビドラマ版では吉沢京子らが出演しています。どちらも、原作の歌詞を基調とした人情劇として描かれています。

カバーと影響

「花街の母」は、三笠優子など多くの歌手によってカバーされています。また、由利徹がこの曲に合わせて女性が裁縫をする芸を披露し、人気を博しました。

「花街の母」は、金田たつえの代表曲としてだけでなく、昭和の歌謡史に残る名曲として、今も多くの人々に愛され続けています。

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