芹沢俊介

芹沢俊介：多角的な視点から社会と人間を深く見つめた評論家

芹沢俊介（1942年8月29日 - 2023年3月22日）は、日本の文芸評論、教育評論、社会評論、そして宗教評論を専門とした著名な論客でした。東京府（現在の東京都）に生まれ、東京都立千歳高等学校、上智大学経済学部を卒業。その後、文筆家としての道を歩み始めます。

特に、哲学者・吉本隆明氏との深い交流は、芹沢氏の思想形成に大きな影響を与えました。吉本氏との出会いをきっかけに、芹沢氏は文学論にとどまらず、教育、宗教、家族といった多様な領域に論陣を張り、独自の鋭い視点で社会現象を分析し続けてきました。

芹沢氏の著作は多岐に渡り、そのテーマは時代を反映するかのように変遷を遂げています。若き日の著作では、文学作品や作家の分析を通して、人間の存在や社会構造を深く掘り下げています。その後、社会問題への関心を深め、教育問題、家族問題、宗教問題、少年犯罪、ひきこもり問題など、現代社会の複雑な諸相を多角的に考察する著作を発表し続けました。

晩年、芹沢氏はグループホーム（養護施設）との関わりを通して養育論を展開しました。これは単なる専門的な考察にとどまらず、現場での実践的な経験に基づいた、温かさと厳しさの両面を備えた深い洞察に満ちたものでした。

ひきこもり問題に関しては、マスメディアで盛んに取り上げられるようになる以前から、その必要性に着目し、問題の本質を見抜いた独自の分析を提供し続けました。これは、社会の偏見や誤解に満ちた認識を覆す、先見の明に富む見解として高く評価できます。

芹沢俊介氏の著作は、その多様さだけでなく、個々の問題に対する深い理解と鋭い洞察、そして何よりも社会への強い責任感と温かい共感に満ちていることが特徴です。一貫して、社会と人間のあり方について、常に真摯な姿勢で問い続け、その知見を私たちに提示し続けてくれました。

2023年3月22日、芹沢俊介氏は脳出血のため、千葉県我孫子市の病院で80歳の人生に幕を閉じました。数多くの著作を残し、現代社会に多大な貢献をした芹沢俊介氏の功績は、これからも長く人々の記憶に刻まれ続けることでしょう。

芹沢俊介氏の主な著作

芹沢俊介氏の著作は30代から60代にわたり多岐にわたるため、年代別に主な著作を以下に示します。

30代:
『宿命と表現 文学論集』
『鮎川信夫』
『浮力と自壊』
『戦後社会の性と家族』
『詩的体験の拡大』
『戦後詩人論』
『芥川龍之介の宿命』
『家族の現象論』

40代:
『女性はいまどこにいるのか』
『「イエスの方舟」論』
『システムの贈りもの』
『漂流へ 家族論集』
『現代＜子ども＞暴力論』
『愛』
『ブームの社会現象学』
『他界と遊ぶ子供たち』
『いじめはどうして起きるのか』
『スポーツ新聞はなぜ面白いか』

50代:
『皇室・家族論』
『「ビジネス書」、時代の欲望』
『子供の暴力、子供への暴力』
『平成＜家族＞問題集』
『眠らぬ都市の現象学』
『子ども問題』
『宮沢賢治の宇宙を歩く』
『「オウム現象」の解読』
『現在読書＜家族・子ども＞を読む本217選』
『主題としての吉本隆明』
『子どもの「悲鳴」にどう向きあうか』
『子どもたちはなぜ暴力に走るのか』
『子どもたちの生と死』
『ついていく父親』
『事件論』
『母という暴力』
『悲しみの十七歳』

60代:
『天才たちは10代、20代に何をしたか』
『引きこもるという情熱』
『経験としての死』
『「新しい家族」のつくりかた』
『死のありか』
『家族という暴力』
『《宮崎勤》を探して』
『子どもたちの閉ざされた心を開け』
『「いじめ」が終わるとき』
『もう一度親子になりたい』
『若者はなぜ殺すのか』
『家族という絆が断たれるとき』
『「存在論的ひきこもり」論』
『家族という意志』
『宿業の思想を超えて』
『子どものための親子論』
『愛に疎まれて』

上記以外にも多くの共著、編著があります。これらの著作は、現代社会における様々な問題を多角的に考察する上で貴重な資料となっています。

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