グループホーム

グループホームとは

グループホームとは、社会的弱者が少人数で共同生活を送るための施設です。高齢者や重度の障害者を対象とした介護施設から、軽度の障害者や家庭での生活が困難な子どもたちが共同生活を送るシェアハウスのようなもの、アパートのような集合住宅まで、その形態は多岐にわたります。グループホームは、地域社会に溶け込んだ生活を目指す「集団生活型介護」の一形態と位置付けられています。

グループホームの概要

グループホームの起源は、ヨーロッパの障害者解放運動、ノーマライゼーションの思想にあります。精神障害者や知的障害者を隔離施設から解放する動きが広がり、高齢者や養護が必要な児童にも適用されるようになりました。

日本では、認知症高齢者向けのグループホームが一般的ですが、嚥下困難や学習障害など、さまざまな障害に対応する施設も存在します。介護保険制度では、認知症高齢者グループホームは住宅とみなされ、提供されるサービスは在宅サービスとして扱われます。グループホームは、家族や里親のような生活様式を目指すもの、社会福祉法人や介護サービス企業が運営するもの、障害者グループが自立して共同生活を送るもの、大規模な福祉施設の一角に設置されたものなど、さまざまな形態があります。

グループホームの歴史

グループホームの原型は、18世紀のイギリスで精神病患者向けに提唱されました。当時は、現在の援護寮、グループホーム、小規模精神科病院に相当する施設が多数建設されました。その後、1980年代には、スウェーデンで認知症緩和ケアの専門家が民家を借りて認知症高齢者と共同生活を始めたことが、認知症高齢者向けグループホームの始まりとされています。この事例が日本にも導入されました。

日本のグループホーム制度

日本では、2000年度から2004年度にかけて策定されたゴールドプラン21により、認知症高齢者グループホームの整備が進められました。2000年に制定された介護保険法により介護サービス給付が利用可能になったことで、グループホームは急速に普及しました。介護保険制度では、グループホームは認知症高齢者型を指しますが、一部自治体では知的障害者向けのグループホームに関する条例も制定されています。グループホームの空き状況は一元的に管理されておらず、利用者は直接施設に確認する必要があります。

介護保険とグループホーム

介護保険制度は、介護が必要な人が住み慣れた地域で安心して生活を継続するための制度です。グループホームの入居には、要介護認定が必須であり、要支援2から要介護5までの認定者が利用可能です。ただし、要支援2の人が利用できるのは「介護予防」の指定を受けている事業所のみで、要支援1の人は利用できません。2005年1月時点で、日本の認知症高齢者向けグループホームの数は6,000施設でした。

グループホームの外部評価

グループホームの外部評価は、都道府県が選定した外部評価機関によって行われます。この評価は、施設が提供するサービス内容について、自己評価と外部評価を比較し、サービスの質向上を目指すことを目的としています。

知的障害者と精神障害者のグループホーム

2006年4月からは、障害者自立支援法に基づき、共同生活援助（グループホーム）と共同生活介護（ケアホーム）の二種類に分けられました。グループホームでは、世話人が家事支援や日常生活の相談を行い、ケアホームでは、世話人に加え生活支援員が食事や入浴、排泄などの介護を行います。グループホームは日常生活の相談が必要な人が対象で、ケアホームは要介護1以上の人が対象です。利用期限は設けられていません。

知的障害者と精神障害者向けのグループホームには、短期間での自立を目指す「通過型」と、長期的な利用を目的とする「定住型」があります。入居者は週に一定回数以上の日中活動への参加が義務付けられることが多いです。

グループホームの問題点

グループホームには、介護職員の過酷な労働環境、虐待、安全対策の不備、入居者の財産侵害、食事の質の低下、衛生管理の問題、職員による横領、通信環境の未整備、利用者に対する囲い込み、公費の不正請求など、さまざまな問題点が指摘されています。過去には、グループホームでの虐待致死事件や火災事故も発生しており、安全対策の強化が求められています。

2005年2月には、石川県でグループホームのスタッフによる虐待致死事件が発生し、2006年1月には、長崎県の高齢者グループホームで火災が発生して7人が死亡しました。これらの事件を受け、防火対策の強化が進められました。2010年3月には、札幌市のグループホームで火災が発生し、7人が死亡しました。この事件を受け、スプリンクラー設置義務がない施設への補助金支給も開始されました。

2021年11月には、大阪府茨木市のグループホームで、職員による入居者への虐待が発覚し、行政指導が行われました。

また、地価の高い東京都を中心に、グループホームの整備率が低い地域があることも課題となっています。

参考資料

バルブロベック=フリス（著）、ハンソン友子（著）、小笠原祐次（編集）『今、なぜ痴呆症にグループホームか—スウェーデンからのメッセージ』2002年筒井書房
イノウ『世界一わかりやすい介護業界のしくみとながれ第4版』(2015年、ソシム)

外部リンク

公益社団法人日本認知症グループホーム協会
介護事業者情報
介護保険地域密着型サービス外部評価情報
すぐわかる介護保険

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