芽

植物の芽：成長の源泉

植物の芽（bud）は、将来の成長を担う重要な構造であり、茎の先端や葉の付け根に形成されます。この小さな構造体は、未熟な茎や葉、そして成長を司る分裂組織から構成され、植物の成長と多様性に深く関わっています。

芽の基本構造

芽は、シュート頂分裂組織という成長を司る細胞群と、その周囲を覆う未熟な茎や葉から成り立っています。シュート頂分裂組織は、茎の先端成長を促し、新しい葉を形成します。葉の基部には、将来側芽となる新たな分裂組織が形成されます。芽が柄を持つ場合は、この柄を芽柄と呼びます。

芽の分類

芽は、その位置、構成器官、活動状態によって様々なタイプに分類されます。

頂芽と側芽

茎の先端に位置し、茎を伸長させるのが頂芽です。一方、茎の側面から新しい枝を伸ばすのが側芽です。種子植物では、側芽は通常葉の付け根（葉腋）に形成されるため、腋芽とも呼ばれます。幼芽は種子内で子[[葉]]の直上にできる最初の芽で、成長して主軸となり、その先端は頂芽となります。

頂芽優勢

茎が活発に成長している間は、頂芽が優先的に活動し、側芽の成長は抑制されます。この現象を頂芽優勢と呼びます。頂芽ではオーキシンという植物ホルモンが生成され、これが側芽の成長を抑制します。頂芽が除去されると、この抑制が解除され、側芽が成長を開始します。

主芽と副芽

1つの葉腋に複数の芽ができる場合、最初に形成される大きな芽を主芽といい、それ以外の芽を副芽といいます。副芽の位置によって、主芽の上下に位置する縦生副芽と、左右に位置する並生副芽に分けられます。副芽の有無や数は、植物の分類において重要な特徴となることがあります。副芽は、主芽が損傷した場合に代替として機能することがあり、予備芽とも呼ばれます。

定芽と不定芽

通常、茎の先端や葉腋に形成される芽は定芽と呼ばれます。一方、それ以外の場所に形成される芽は不定芽と呼ばれます。茎から生じる不定芽は茎上不定芽、葉から生じる不定芽は葉上不定芽、根から生じる不定芽は根上不定芽と呼ばれます。葉上不定芽は、コモチシダやクモノスシダなどの植物に見られ、葉から直接新しい植物体が形成されることがあります。

葉芽、花芽、混芽

芽は、展開した際にどのような器官を形成するかによっても分類されます。葉だけを形成する芽を葉芽、花だけを形成する芽を花芽、葉と花の両方を形成する芽を混芽といいます。一般的に花芽は葉芽よりも太く丸い形をしています。混芽は、先端に花をつける場合や、葉腋に花をつける場合があります。

休眠芽、冬芽、夏芽

成長に適さない時期に休眠状態になる芽を休眠芽といいます。特に、冬に休眠する芽は冬芽、夏に休眠する芽は夏芽と呼ばれます。休眠芽は、芽鱗や毛、樹脂などに覆われ、寒さや乾燥、病虫害から保護されています。休眠芽は、その年の不適期を過ごした後、通常は新しいシュートを伸ばしますが、場合によっては数年休眠状態が続くことがあります。このような芽は潜伏芽と呼ばれます。また、茎の組織に隠れて外から見えない隠芽や、一部が露出している半隠芽、葉柄に包まれた葉柄内芽もあります。

鱗芽と裸芽

休眠芽は、特殊な鱗片葉（芽鱗）に覆われていることがあります。芽鱗で覆われた休眠芽を鱗芽といい、芽鱗がない休眠芽を裸芽といいます。芽鱗の数や形、配列は、植物の分類における重要な特徴となります。

むかご

地上部の腋芽が肥大化し、分離して新しい植物体となる機能を持つものをむかごといいます。葉原基が肉質化したものを鱗芽、幼茎が肥大化したものを肉芽といいます。むかごは、栄養繁殖に利用されます。

芽内形態

芽の中における葉の畳まれ方や配置関係を芽内形態といいます。葉の畳まれ方を芽中姿勢といい、単純型、二つ折り型、扇型、片巻き型、内巻き型、外巻き型、渦巻き型などがあります。葉の相互の位置関係を芽中包覆といい、瓦重ね状、片巻き状、敷石状などがあります。

人間との関わり

芽は、食用としても利用されます。ミョウガやブロッコリー、カリフラワーは花芽を食用とし、タケノコは竹の地下[[茎]]から生じた芽です。また、ゼンマイやワラビ、フキなど、多くの山菜も芽や幼葉を食用とします。一方で、ジャガイモの芽に含まれるソラニンのように、有毒な芽も存在します。

まとめ

芽は、植物の成長と多様性を理解する上で欠かせない構造です。その形態、機能、分類を学ぶことで、植物の世界への理解を深めることができます。この記事が、芽に関する知識を深めるための一助となれば幸いです。

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