若い方の淑女

若い方の淑女（The Younger Lady）

「若い方の淑女」とは、1900年代初頭に王家の谷のKV35墓にて考古学者ビクター・ロレットにより発見されたミイラに付けられた名称です。このミイラは、またの名をKV35YLや61072とも呼ばれ、現在はカイロのエジプト考古学博物館に展示されています。

ミイラの正体

近年のDNA分析によると、このミイラは古代エジプトのファラオ、ツタンカーメンの母親であることが確認されました。彼女はファラオのアメンホテプ3世と女王ティイの娘であったことが判明しました。これにより、かつて彼女が女王ネフェルティティであるとする説は否定されました。

発見時の状況

このミイラは、ルクソールの王家の谷、特にKV35号墓の床に横たえて発見されました。周囲には王族の女性が身に付けるかつらが置かれており、彼女が王族であることが一目で分かる状況でした。調査によると、彼女の身長は158センチメートル、死亡当時の年齢は約25歳と推定されています。これらの情報はCTスキャンによる頭蓋骨の分析と親知らずの状態から導き出されました。

身体的特徴と損傷

ミイラの頭部には直径約3センチメートルの穴が開いており、これは死後に空いた可能性が高いとされています。また、頭部内部には脳や脳膜が残っていることが確認されており、これは通常、エジプト第18王朝以降のミイラでは脳が摘出されるため異例の事例です。このことに関してはまだ解明されていない点が多いです。

さらに、彼女の美しい顔の左半分には大きな傷があり、その傷跡には死後に付けられた痕跡が見当たらないため、凶器によるものと考えられています。エジプト考古学者のザヒ・ハワスは、この傷が馬などの動物による蹴りか、重い物が落ちたことによるものであったと語っています。その他にも両足の前半分、骨盤、胸の一部、肋骨などにかなりの損傷が見られます。右腕は折れており、KV35内で見つかった数本の腕のうちのどれかが彼女のものと考えられています。古代エジプトの王族女性は、埋葬時に片腕を曲げて胸の上に置き、もう片方は真っ直ぐ下に下ろす姿勢を取ることが一般的でした。

彼女の耳の片方は欠損していますが、残された片耳にはピアスの穴が開いていることが確認されています。

まとめ

「若い方の淑女」は、古代エジプトの歴史や王族の人物像にとって非常に重要な存在です。彼女のミイラが持つさまざまな特徴や損傷の理由を解明することは、考古学と医学の研究における新たな道を開くかもしれません。今後の研究により、彼女の人生や死因についてさらに多くの情報が明らかにされることが期待されます。

もう一度検索