若松正志

若松 正志（わかまつ まさし）氏は、1963年11月30日に石川県金沢市で生まれた日本の歴史学者です。現在、京都産業大学の教授として教鞭を執っており、その専門は日本近世史にあります。

経歴

若松氏は、歴史学の研究者としてのキャリアを東北大学でスタートさせました。1986年3月、同大学文学部史学科の国史専攻を卒業。学部での研究の集大成として、「初期豪商末次平蔵の研究」と題する卒業論文を執筆し、近世初期における有力な豪商に関する考察を深めました。さらに専門的な知識を深めるため、東北大学大学院文学研究科の博士前期課程に進学。1988年3月にこの課程を修了し、「近世前期における江戸幕府の長崎支配について」というテーマで修士論文を提出しました。これは、江戸時代初期における幕府の重要拠点であった長崎の統治機構に焦点を当てた研究です。その後、博士後期課程に進みましたが、1990年3月にこれを中途退学しています。

大学院での学びを終えた後、若松氏は1990年4月より、母校である東北大学文学部史学科にて助手として奉職を開始しました。国史学第二講座に所属し、研究と教育の基礎を築きました。

1993年4月には、京都の京都産業大学に活躍の場を移し、教養部の講師に就任しました。以降、同大学内で順調にキャリアを重ねます。1995年4月には経済学部の講師となり、1997年4月には同助教授に昇任。2000年4月からは文化学部の助教授を務め、そして2004年4月、文化学部の教授に昇任し、現在に至っています。京都産業大学において、四半世紀以上にわたり、歴史学の研究教育に貢献しています。

研究分野と主な業績

若松氏の専門は、江戸時代を中心とした日本近世史です。特に、その研究は多岐にわたり、近世社会の構造、経済、文化、対外関係など、幅広いテーマに関心を寄せています。その研究成果は、多くの共著として発表されています。

若松氏が執筆に携わった主な共著には、以下のようなものがあります。

渡辺信夫編『近世日本の都市と交通』（河出書房新社、1992年） - 近世社会の基盤をなす都市とそのネットワークとしての交通に焦点を当てた研究。
渡辺信夫編『近世日本の生活文化と地域社会』（河出書房新社、1995年） - 人々の日常生活や文化が、それぞれの地域社会の中でどのように育まれ、影響し合ったかを考察。
丸山雍成編『日本近世の地域社会論』（文献出版、1998年） - 統一的な国家構造の下で多様なあり方を見せる近世の地域社会を深く掘り下げた論集。
原田敬一・水野直樹編『歴史教科書の可能性 「つくる会」史観を超えて』（青木書店、2002年） - 歴史認識や歴史教育の現代的な課題に対し、学術的な視点から提言を行った著作。
小林克編『掘り出された都市 日蘭出土資料の比較から』（日外アソシエーツ、2002年） - 文献史料に加え、日本とオランダの都市遺跡から出土した遺物を比較検討することで、近世都市の実像に迫る考古学・歴史学の連携研究。
片桐一男編『日蘭交流史 その人・物・情報』（思文閣出版、2002年） - 江戸時代を通じて特異な関係性を維持した日本とオランダ間の交流、特に人、物、情報の伝達がもたらした歴史的影響を多角的に分析。

これらの著作からも、若松氏が近世史の様々な側面、すなわち社会経済、文化、地域、対外関係、さらには歴史学の方法論や教育のあり方にまで広い視野を持っていることがうかがえます。日本近世史研究における中心的なテーマに加え、現代的な問題意識や学際的なアプローチも取り入れている、精力的な歴史学者です。

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