水野直樹

水野直樹（みずの なおき）は、1950年10月31日生まれの日本の歴史学者です。立命館大学の客員教授であり、京都大学の名誉教授でもあります。彼の専門は、朝鮮近代史、特に植民地時代の朝鮮半島と東アジア関係史です。

水野氏は、日本の植民地支配を肯定的に評価しようとする学界の動向に異を唱え、植民地近代化論を批判してきたことで知られています。この研究活動が評価され、韓国の全南大学校から後廣賞を受賞しました。また、八木晃介、上田正昭らと共に「朝鮮学校を支える会」の呼びかけ人を務めるなど、社会活動にも積極的に参加しています。

略歴

水野氏は京都府出身で、1969年3月に京都市立紫野高等学校を卒業後、京都大学に進学しました。1974年には京都大学文学部史学科現代史学専攻を卒業し、1981年には同大学大学院人文科学研究科博士後期課程を修了しました。

1985年3月には、京都大学から博士号を授与され、同年に京都橘女子大学の助教授に就任。1991年には京都大学人文科学研究所の助教授となり、2001年には同研究所の教授に昇任しました。2009年4月からは同研究所の所長を務め、2016年3月に定年退職しました。

主な著書

水野氏は、数多くの著作を発表しており、その中には単著と共著、訳書が含まれます。特に、単著『創氏改名』（岩波新書、2008年）は、植民地時代の朝鮮における創氏改名政策を詳細に分析した著作として知られています。その他の主な著書は以下の通りです。

単著

『創氏改名』（岩波新書、2008年）

共著

『朝鮮の近代史と日本』（大和書房、1987年）
『天皇制と朝鮮』（神戸学生・青年センター出版部、1989年）
『「アリランの歌」覚書』（岩波書店、1991年）
『論集 朝鮮近現代史』（明石書店、1996年）
岩波ブックレット No.552『日本の植民地支配―肯定・賛美論を検証する―』（岩波書店、2001年）
『歴史教科書の可能性―「つくる会」史観を超えて―』（青木書店、2002年）
人文研ブックレットNo.16『朝鮮人留学生たちの京都』（同志社大学人文科学研究所、2003年）
『生活の中の植民地主義』（人文書院、2004年）
水野直樹、西野瑠美子、俵義文他「心ある日本の方々に　中学校『歴史教科書』の採択に際し、今知ってほしいこと‐共に考えましょう、子どもたちの未来のために」在日本大韓民国民団文教局
水野直樹 , 文京洙『在日朝鮮人　歴史と現在』岩波書店、2015年。

訳書

姜萬吉「韓国民族運動史論」（御茶の水書房、1985年）
* 朝鮮民衆新聞社編「写真集 朝鮮解放1年」（新幹社、1994年）

研究活動と社会貢献

水野氏の研究は、植民地支配の歴史を多角的に捉え、その影響を深く掘り下げることを特徴としています。特に、創氏改名や朝鮮人留学生の問題など、具体的な事例を通して、植民地支配が人々に与えた影響を明らかにしようとしています。

水野氏は、研究活動だけでなく、社会的な活動にも積極的に参加しており、「朝鮮学校を支える会」の呼びかけ人を務めるほか、歴史教科書問題にも積極的に関わっています。また、強制動員真相究明ネットワークや日韓市民でつくる日韓会談文書全面公開を求める会など、歴史認識に関わる市民運動にも積極的に参加しています。

水野直樹氏は、研究者としてだけでなく、社会の動向にも目を向け、歴史と社会のより良い未来を追求する活動を続けています。

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