苦い旋律

苦い旋律

『苦い旋律』は、作家・梶山季之によって書かれた長編小説です。風俗小説というジャンルでありながら、女性週刊誌という、当時としては珍しい媒体で連載されたことが特徴です。連載中には読者からの投稿も掲載されるなど、読者参加型の企画も行われ、大きな話題を呼びました。

あらすじ

物語は、女子大を卒業後、特に目的もなく日々を過ごしていた一貫寺邦子が、叔父の紹介で茶道教室に通い始める場面から始まります。そこで出会った茶道家の藤野登志子に魅力を感じ、惹かれていく邦子。そんな中、邦子は東銀座にある「メルヘン産業」という会社の女性秘書募集の広告を目にし、応募します。面接で出会った社長の曄道征四郎は、若くして成功した実業家でしたが、彼には秘密の趣味がありました。邦子は、その秘密に触れることで、自身の人生が大きく変わっていくことになります。

登場人物

一貫寺邦子（いっかんじ くにこ）
主人公。津田塾大学を卒業後、特に目的もなく日々を過ごす「高等遊民」。茶道教室で出会った藤野登志子に、姉のような慕情と妖しい魅力を感じています。
一貫寺毅彦（いっかんじ たけひこ）
邦子の父。官僚。
一貫寺保彦（いっかんじ やすひこ）
邦子の叔父。西銀座の広告代理店で専務を務めています。
藤野登志子（ふじの としこ）
茶道家。30代の女性で、茶寮「無迷庵」の庵主。広告代理店の女性社員に華道も教えています。邦子が憧れを抱く、妖艶な魅力を持つ女性。
曄道征四郎（てるみち せいしろう）
青年実業家。「メルヘン産業」の社長。東銀座に自社ビルを所有するほどの成功者ですが、秘密の趣味を持っています。

メディアミックス

本作は、劇画家の上村一夫によって劇画化されています。

『苦い旋律』少年画報社 1973年6月1日初版（月二回刊『ヤングコミック』掲載、1973年）

書誌情報

『苦い旋律』（『女性セブン』小学館、1967-68年連載）
『苦い旋律（前篇・後編）』集英社、1968年
『苦い旋律』集英社文庫、1982年8月25日初版 ISBN 4-08-750541-3

関連事項

フェティシズム
* LGBT


『苦い旋律』は、一見すると華やかな世界で生きる人々が抱える、欲望や秘密を描いた作品です。当時の社会風俗を背景に、人間の奥底にある複雑な感情や欲望を、梶山季之ならではの筆致で描き出しています。また、女性誌に連載されたという点でも、当時としては異色であり、多くの読者の関心を集めた作品と言えるでしょう。

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