英国国立医療技術評価機構

国立医療技術評価機構（NICE）について

国立医療技術評価機構、通称NICEは、イギリスの保健省に所属する公共機関として、医療の質と効率を評価する重要な役割を果たしています。NICEは、イングランドの国民保健サービス（NHS）とウェールズNHSに対して、医療技術や治療法のガイドラインを提供し、地域に依存しない公平な医療アクセスの実現を目指しています。

ガイドラインの役割

NICEが発行しているガイドラインは4つの主要な領域に分かれており、それぞれ以下のような目的を持っています。
1. 医療技術の評価: 新薬や治療法の使用に関するガイドラインを提供します。
2. 臨床適用: 疾患や徴候に基づいた治療手技に関するガイドラインを策定します。
3. 健康づくりと防疫: 公的機関向けの健康促進や疾病予防に関する指針を提供します。

これらのガイドラインには、様々なケースを考慮した効果性や費用対効果の評価が含まれており、特に質調整生存年（QALY）が健康成果の尺度として広く用いられています。ガイドラインは公式にはイングランドに限定されていますが、ウェールズやスコットランド、北アイルランドでも利用されています。

歴史的背景

NICEは1999年に国立臨床評価機構として設立され、その後2005年に健康推進機構を併合し、さらに2012年にはSocial Careを含む新たな任務を加えた形で改組されました。このような変遷を経て、NICEは医療分野におけるエビデンスに基づくガイドラインの開発において、国際的にも高い評価を得ています。

費用対効果の明確な基準

NICEの特筆すべき点は、医療技術に対して明示的に費用対効果の基準を設けていることです。これにより、健康分野の資源配分がより効率的に行われるようになり、特に患者が受けられる治療の質が地域に依存しない形で標準化されました。かつては「郵便番号を使った宝くじ」と揶揄された医療制度の改善に寄与しているのです。

臨床ガイドラインの策定過程

NICEが提供する臨床ガイドラインは、多様な疾患に対応しており、治療法の選定とその経済的な側面を同時に評価します。国家共同研究センター、専門機関、患者団体などとの連携を通じて、ガイドライン作成グループが設立され、医療専門家や患者の意見を反映したガイドラインが作成されます。意見聴取とレビューの後、最終的に国立共同研究センターによって公式なガイドラインが発行され、NHSの実施ガイドラインとして適用されます。

NICEの国際的役割

加えて、NICEは2008年にNICE Internationalを設立し、他国の政府や医療制度との連携を深めています。これにより、国際的な医療品質の向上に貢献するとともに、各国が抱える医療課題への対応策を提示しています。

結論

国立医療技術評価機構（NICE）は、医療の質向上と効率的な資源利用を目指し、エビデンスに基づくガイドラインの策定および公開を行っています。これにより、イギリスのみならず国際的な医療現場にも影響を与えている重要な機関であると言えるでしょう。

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