英国規格

英国規格（British Standards, BS）とは

英国規格（BS）は、英国規格協会（British Standards Institution, BSI）によって制定されるイギリスの国家規格です。その適用範囲は非常に広く、ボルトやねじのような基礎的な部品から、鉄道、造船、航空機、コンピュータといった複雑なシステムまで、あらゆる分野の製品やサービスの品質と安全性を規定しています。

現在、25,000を超える英国規格が発行されており、その品質を保証する認証マークとして、凧の形にちなんだ「カイトマーク」が広く知られています。

英国規格協会（BSI）について

英国規格協会（BSI）は、1901年にイギリス土木学会の提唱により、英国王室の認可を受けて設立された非営利団体です。BSIは、英国規格の策定、試験、監査、登録、そして技術コンサルティングなど、幅広い活動を行っています。

BSIが発行する英国規格（BS）は、ドイツのドイツ連邦規格（DIN）やアメリカ合衆国のASTM規格と並び、世界中で広く利用されています。日本にもBSIの子会社であるBSIグループジャパン株式会社があり、英国規格やISO規格の認証、トレーニングなどを提供しています。

英国規格協会の歴史

1901年～1914年：規格化の始まり

1901年1月22日、ロンドンのタワーブリッジを設計したサー・ジョン・ウルフ＝バリーが土木技術者協会に鉄鋼部門の標準化を検討する委員会の発足を提唱したことが、英国規格の始まりでした。同年4月26日には最初の工学標準化委員会が開催され、構造要綱の種類が175から113に削減されるなど、標準化が進みました。

1903年には、製品の一定基準への準拠を消費者に示す必要性が高まり、英国規格マークの作成と登録が開始されました。これが後に「カイトマーク」として知られるようになります。また、鉄道の線路にも規格が適用され、軌間が大幅に削減されました。

1915年～1945年：規格化の拡大

第一次世界大戦中、英国規格は海軍本部、陸軍省、商務院、ロイド船舶登録簿など、多くの政府機関や団体で使用されるようになりました。

1920年代には、規格化の動きがカナダ、オーストラリア、南アフリカ、ニュージーランドといった国々に広がり、アメリカやドイツも関心を示すようになりました。

1929年4月22日、工学標準化委員会（1918年から英国工学規格協会）は英国王室の認可を受け、1931年には現在の英国規格協会（British Standards Institution）に改称しました。

1946年～1975年：消費者の懸念と国際規格の統一

1950年代後半から1960年代にかけて、市場には多くの消費者製品が出回るようになり、同時に粗悪な品質の製品も目立つようになりました。これを受けて、1953年にはカイトマークが家具や圧力鍋、オートバイのヘルメットなど、いくつかの製品に適用され、製品の品質を確かめるための目印となりました。

製品だけでなく、大気汚染、原子力エネルギー、工業用、学校やオフィス家具用、動物の空輸用のセーフティーカラーなど、多岐にわたる分野で規格が発行されました。

1951年には、英国内の消費者関連の規格について助言を行う女性諮問委員会が設立され、これが今日の消費者政策委員会（COPOLCO）の先駆けとなりました。

1976年～1997年：マネジメントシステム規格

ISO9001（品質マネジメントシステム）やISO14001（環境マネジメントシステム）が制定され、国際的なマネジメントシステムの規格が普及しました。

BSIグループは、規制緩和により、イギリス国内だけでなく、ヨーロッパや全世界でビジネスを展開しました。

1998年～：グローバル化の拡大

1998年から2007年の間、BSIグループは、CEEM（アメリカ）、Mertcontrol（ハンガリー）、International Standards Certification Pte Ltd（シンガポール）など、多くの組織を買収し、グローバル展開を加速させました。

代表的な英国規格

以下に、代表的な英国規格とその概要を示します。

BS 7671：電気設備に関する規格
BS 5750：品質マネジメントに関する認証規格（ISO 9001に相当）
BS 7750：環境マネジメントに関する認証規格（ISO 14001に相当）
BS 7799：情報セキュリティに関する認証規格（ISO/IEC 27001に相当）
BS 8800：労働安全衛生マネジメントに関する認証規格（OHSAS 18001に相当）
BS 8600：苦情対応マネジメントに関する認証規格（ISO 10002に相当）
BS 7925-1：ソフトウェアのテスト実施基準
BS 8110：コンクリートの設計基準
BS 15000：IT[[サービスマネジメント]]に関する認証規格（ISO/IEC 20000|ISO_IEC 20000に相当）
BS 25999：事業継続に関する認証規格（ISO 22301に相当）
BS 8901：サステナビリティイベントマネジメント規格
BS EN 15221：ファシリティマネジメントに関する規格（ISO 41001に相当）

まとめ

英国規格（BS）は、イギリスの産業界を支える重要な基盤であり、その影響力は国際的にも非常に大きいものです。BSIは、規格の策定だけでなく、認証やトレーニングを通じて、製品やサービスの品質向上に貢献しています。英国規格の歴史を知ることで、現代の産業界における標準化の重要性を再認識することができます。