英春流

英春流：アマチュア棋士が生み出した独自の将棋戦法

英春流は、アマチュア将棋棋士である鈴木英春氏によって開発された独自の戦法群の総称です。その中心となるのは「かまいたち戦法」と「カメレオン戦法」で、近年ではこれらを発展させた戦法も考案されています。英春流は、独特の駒組みと柔軟な対応を特徴としており、プロ棋士にも影響を与えたとされています。

かまいたち戦法：堅実な駒組みと柔軟な対応

かまいたち戦法は、先手後手ともに独特の駒組みを特徴としています。先手は▲7六歩や端歩突きから始まり、▲4八銀～▲5六歩～▲5七銀と右銀を中央に展開するのが基本です。相手の戦法（居飛車、振り飛車、中飛車など）に応じて、5筋位取りや菊水矢倉など、柔軟な対応が可能です。後手は△6二銀から角道を開けずに駒組みを進め、相手の攻めを冷静に受け止めながら反撃の機会を伺います。

コンピュータ将棋の評価では、英春流の初手は疑問手と評価されることが多いですが、実際には多くのアマチュア棋士や一部のプロ棋士にも採用されており、その実力は証明されています。特に、1994年の竜王戦で羽生善治氏が谷川浩司氏相手に勝利した際に使用したことが有名です。この対局では、かまいたち戦法の独特な駒組みが、羽生氏の勝利に貢献したとされています。

かまいたち戦法にはいくつかのパターンがあり、『必殺!19手定跡』で紹介されている「19手定跡」もその一つです。これは、居飛車に対して19手で基本図に到達する手順を示したもので、様々な変化に対応できる柔軟性を持ちます。また、振り飛車に対しては、早い段階で5筋の位を取り、堅牢な陣形を構築します。

鈴木氏は、奨励会時代に禅の修行を通してこの戦法を開発したと語っています。禅の精神を将棋に投影することで、シンプルながらも奥深い戦法を完成させました。年齢制限により奨励会を退会した後、この戦法を用いてアマチュア棋戦で活躍し、1986年と1987年にはアマ王将を連覇するなど、その実力を証明しました。

カメレオン戦法：攻めに特化した変幻自在の戦法

カメレオン戦法は、かまいたち戦法とは対照的に攻めに重点を置いた戦法です。先手番は▲9六歩や▲4八銀から、後手番は△6二銀から始まり、右銀を3七に進出させるのが基本です。その後は、相手の戦法に応じて柔軟に陣形を変え、居飛車、振り飛車、中飛車、三間飛車など、様々な戦法に対応できます。

この戦法の特徴は、その変幻自在な陣形にあります。序盤は棒銀のような形を取りますが、玉の動きによって守備駒に変化したり、居飛車形や振り飛車形など様々な形に変化します。まるでカメレオンのように、相手を翻弄する戦法です。コンピュータ将棋では初手が疑問手と評価されている場合もありますが、その柔軟性と攻めの姿勢は多くの将棋愛好家を魅了しています。

その他の戦法

英春流には、かまいたち戦法やカメレオン戦法以外にも、「右四間」、「陽動振り飛車」、「つくつくぼうし戦法」など、様々な戦法があります。これらの戦法は、それぞれ独自のアイデアと特徴を持っており、英春流の幅広さを示しています。

まとめ

英春流は、アマチュア棋士によって開発された独自の戦法群であり、その柔軟性と奥深さは、多くの将棋愛好家に魅力を与えています。堅実な駒組みを特徴とするかまいたち戦法と、攻めに特化したカメレオン戦法は、それぞれ異なる特性を持ちながらも、互いに補完し合う関係にあります。これらの戦法を学ぶことで、将棋の戦術理解が深まり、自身の棋力向上に繋がるでしょう。また、アマチュア棋士が独自の戦法を生み出し、プロ棋界に影響を与えたという点も、英春流の大きな魅力の一つです。

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