英雄的ゲリラ

『英雄的ゲリラ』について

『英雄的ゲリラ』は、アルゼンチン出身のマルクス主義革命家チェ・ゲバラの姿を捉えた歴史的な写真です。この写真は、1960年3月5日にハバナで行われた追悼集会で撮影され、20世紀において最も多くの複製が行われた写真の一つとされています。撮影を行ったのは、フォトグラファーのアルベルト・コルダです。

撮影の背景

この写真が撮影される前日、1960年3月4日にハバナ港で発生した惨事、すなわち蒸気貨物船「ラ・クーブル号」の爆発事件がありました。この事件では81名が命を落とし、数百名が負傷しました。次の日、事件を受けた追悼集会がハバナ市のコロン墓地で行われ、そこでゲバラはキューバ政府の閣僚の一員として演壇に立っていました。

壇上では、フィデル・カストロが爆発事件の詳細を説明していた中、他にも多くの閣僚や来賓がいた中で、ゲバラは後方に立っていました。撮影者コルダは約10メートルの距離から90 mmのカメラを構えており、ゲバラの姿を確認することはできませんでした。しかし、ゲバラが聴衆の様子を見ようと前に出た瞬間、コルダはその姿を捉えることができました。約30秒ほどの間に2枚の写真を撮影し、その一枚が『英雄的ゲリラ』となりました。

写真の公開と普及

最初は『レボルシオン』紙の写真記者として働いていたコルダは、撮影した写真全てを編集部に送ったものの、ゲバラの写真は掲載されませんでした。しかし、コルダはこの写真を気に入り、スタジオで『英雄的ゲリラ』と題して展示していました。

この写真は長い間公にされることはありませんでしたが、1967年にイタリアの共産主義者・出版者ジャンジャコモ・フェルトリネッリがコルダのスタジオを訪れ、写真のことを知りました。彼はその場で『英雄的ゲリラ』を気に入って2枚の焼き増しを持ち帰り、さらに同年10月9日にはゲバラがボリビアで捕縛・処刑されたことで、彼の写真がポスター化され始めました。

この一連のことから、『英雄的ゲリラ』は初めて世間に知られることとなり、特にヨーロッパの左翼反体制運動のシンボルとして大きな影響を与えました。フィッツパトリックによる改変版のポスターは、1968年のフランス五月革命でも使用され、反体制の象徴として広まりました。

ファッションと文化への影響

1970年代に入ると、反体制運動は一時期沈静化しましたが、『英雄的ゲリラ』はファッションデザインや様々な商品に使用されるようになりました。2008年には『英雄的ゲリラ』の誕生から普及までを描いたドキュメンタリー映画『Chevolution』も制作され、多くの人々がその歴史を知るきっかけとなりました。

著作権と実情

撮影者のコルダは、生前に「この写真が世界の平和のために使われることには賛成である」と述べており、著作権を主張しませんでした。キューバの著作権法によって、コルダの死後50年までその写真は保護されていますが、特に2000年にディアジオという酒造会社がこの写真を使用しようとした際には、ゲバラの名声を利用しようとしたとして訴訟に発展し、会社は和解金を支払い、この宣伝を中止する結果となりました。

結論

『英雄的ゲリラ』は単なる写真ではなく、チェ・ゲバラの象徴として、また反体制のシンボルとして多くの人々に影響を与え続けています。フィルム、ポスター、ファッション、そして現代の文化においてもその存在は消えることなく、ゲバラの思想や活動を考える上で欠かせない要素となっています。

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