茂山七五三

二世茂山 七五三（しげやま しめ）

二世茂山七五三は、狂言方大蔵流に属する能楽師であり、国の重要無形文化財である「狂言」の各個認定保持者、すなわち人間国宝です。本名を茂山眞吾（しげやま しんご）といい、1947年（昭和22年）8月30日に京都府で生を受けました。

父は後に四世茂山千作を襲名する茂山眞一、母は幸子。その次男として、狂言の家系に生まれました。狂言の手ほどきは、わずか2歳の頃から祖父にあたる三世茂山千作より受け始め、4歳という幼さで狂言『業平餅』の子方として初めて舞台に立っています。その後、中学時代に母を亡くし、翌年には父が再婚。1964年には年の離れた異母弟・千三郎氏（後に千五郎家を離れ独立）が誕生しています。

東山高等学校を卒業後、京都産業大学経済学部に進学。高校時代から本格的に取り組んでいた剣道を大学でも続け、3回生の時には全国大会で個人ベスト16に入るという、狂言とは異なる分野でも才能を発揮しました。当時の茂山家には、長男が家業を継ぎ、次男以降は別の職業を持ちながら休日に狂言を行うという考えがあり、また狂言だけで生計を立てる難しさも相まって、大学を卒業した1970年、狂言師としての活動を続けながら、京都中央信用金庫に入職しました。銀行員として外回りの営業を担当する中で、狂言師・茂山家の人物であることから顧客からの信頼を得やすく、預金集めに有利に働いたという経験も語っています。職場からの理解もあり、銀行員と狂言方の二足の草鞋を履き続け、1975年の日本能楽団によるイラン、スイス、西ドイツでの海外公演にも参加するなど、国内外で活動を続けていました。

1973年に銀行員であった女性と結婚し、家庭を築きました。1975年には長男の宗彦氏が、1979年には次男の逸平氏が誕生しています。

狂言師としての活動を本格化させる転機となったのが、1976年に同母兄である正義氏（後の五世茂山千作）や従弟の晃氏と共に発足させた「花形狂言会」でした。この会では古典狂言の上演に加え、小松左京氏の作品を基にした「SF狂言」など、意欲的な新作狂言にも積極的に取り組み、狂言の新たな可能性を追求しました。

サラリーマンとして働きながら狂言を続ける生活は40歳頃まで続きましたが、狂言師専業となる決意を固めたのは、自身の子供が成長し、狂言の大曲である『釣狐』を披く（上演する）際に、最高の指導をしてやれる年齢を考えると今しかない、という思いからでした。

狂言への貢献が評価され、1993年には京都府文化奨励賞を受賞。1995年12月には、父である四世千作の本名「七五三」を、二世として襲名しました。

海外での活動も積極的に行い、1998年にはチェコ共和国のプラハで狂言公演を実施。これが契機となり、2000年にはプラハやブルノで狂言ワークショップを開催するなど、チェコでの狂言普及に尽力しました。現在も、チェコ国内に創設された「七五三（なごみ）狂言会」で狂言指導を行っています。

2023年7月には、重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝に認定されました。これは、祖父の三世茂山千作、父の四世千作に続き、茂山家から親子三代にわたる人間国宝認定という、極めて稀な快挙です。認定に際しては、既に他界していた兄・五世茂山千作への深い思いを語り、「本来なら兄がいただくべきものだったはず。千五郎家の狂言を多くの方に愛されるものにしていくという役割を、兄に代わって果たしたいと思います」と述べています。

芸風

二世茂山七五三氏の芸風は、人間国宝指定の答申の中で高く評価されています。大蔵流の中でも、特に明朗で写実的な味わいを特徴とする京都の茂山家の芸を深く体現しつつも、そこに堅実さと軽妙さを併せ持つ独自の境地を確立していると評されています。

主な受賞・顕彰

京都府文化奨励賞（1993年）
京都府文化賞功労賞（2007年）
名張市市政功労者特別表彰（2009年）
京都市文化功労者（2011年）
京都市芸術文化協会賞（2015年）
芸術選奨文部科学大臣賞（2020年）
人間国宝（重要無形文化財「狂言」各個認定、2023年）
旭日小綬章（2025年）

父である四世茂山千作、兄である五世茂山千作、長男の茂山宗彦氏、次男の茂山逸平氏も狂言師として活躍しており、狂言の伝統を次世代へと繋いでいます。

※この文章は、提供された情報を基に記述しています。

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