茨木保

茨木保（いばらき たもつ）

茨木保は、1962年1月5日生まれの日本の漫画家、そして産婦人科医（医学博士）です。大阪府東大阪市出身で、現在は東京都在住。

人物

6人兄弟の末っ子として生まれた茨木は、実家が町工場を経営していました。兄は通信工学者の茨木久。小学校4年生の時に手塚治虫の『火の鳥』を読み、医師免許を持つ漫画家である手塚に憧れ、医師と漫画家の両方を目指すようになります。

大阪府立高津高等学校を卒業後、奈良県立医科大学に入学。医大生時代には、大学祭の講演に訪れた手塚治虫と面談する機会を得ます。茨木が「医師と漫画家両方を目指している」と告げると、手塚は「ボクみたいな落伍者にならず、医者になってください」と諭しつつも、漫画については真剣に話を聞いたといいます。その翌年、投稿作が『週刊少年ジャンプ』の手塚賞最終選考に選ばれますが、受賞には至りませんでした。

1986年に奈良県立医科大学を卒業し、同大学の産婦人科医局に入局。1989年からは京都大学ウイルス研究所で発がん遺伝子の分子生物学的研究に携わる傍ら、持ち込んだ原稿『遠い手紙』が『週刊ヤングジャンプ』月例新人賞佳作を受賞。『ヤングジャンプ増刊号』に掲載され、プロ漫画家としてデビューを果たします。デビュー作が掲載されたのは、奇しくもヤングジャンプの手塚治虫追悼号でした。

その後、「青年漫画大賞」など、集英社の新人賞に計8度入賞。1991年に奈良県立医科大学大学院博士課程を修了。勤務医を続けながら、医学や看護学の専門書を中心に、漫画家・イラストレーターとして活躍します。大和成和病院婦人科部長を経て、2006年には、いばらきレディースクリニックを開設しました。

2000年からは、『週刊ヤングサンデー』にて連載された『Dr.コトー診療所』の医学監修を担当し、構成や作画資料など幅広い制作協力を務めました。同作はフジテレビでドラマ化され、大ヒットを記録。茨木は、本作の人気の理由について「医療不信が強い今だからこそ、注目が集まっているのかもしれません」と語っています。以後、多くの漫画の医学監修を手掛け、『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』など、テレビドラマの監修、制作協力なども数多く手掛けています。『コード・ブルー』に登場する医師、橘啓輔の人物設定は、茨木の臨床経験がベースになっていると、プロデューサーが語っています。

2006年より『週刊日本医事新報』にて、医師の悲哀をユーモラスに描いた『がんばれ！猫山先生』の連載を開始。同作は医療関係者からの支持を集め、16年間の長期連載となりました。2022年には、理化学研究所・編集工学研究所共同プロジェクト「科学道100冊」に、茨木の著書『まんが医学の歴史』が選出されています。

漫画、イラストに加え、エッセイや小説なども発表しています。

作風

等身大の医師の日常を描く柔らかな作品が主体ですが、医学史や偉人を主人公とした硬質な作品も手掛けています。専門書のイラストでは、「漫画を通して難しいものをわかりやすく」をモットーとしており、自身が描く漫画調のメディカルイラストレーションを「メディカルカートゥーン」と呼んでいます。猫好きで子供の頃から猫を飼っており、作品にはしばしば擬人化した猫が登場します。万博好きでもあり、自身が描く「世界の科学の流れを面白く見せる漫画」を「一人万博」と表現しています。

もう一度検索