茹太素

茹太素（じょ たいそ）は、明の初期に活躍した官僚であり、その生没年は不明です。彼の出身地は沢州でした。

官僚としての道

1370年、茹太素は郷里からの推挙を受け、その才能を認められて洪武帝に仕えることになります。彼は皇帝に上書を行い、その内容が気に入られたことから監察御史に任じられました。その3年後には、四川按察使に抜擢され、その公正な裁きで知られるようになりました。しかし、その翌年には南京に召還され、刑部侍郎となります。

茹太素は、当時の官僚制度の問題点を指摘し、以下のような上奏を行いました。

中書省による官僚摘発において、御史台の管轄が曖昧になっているため、守院御史に調査をさせるべきである。
磨勘司の官吏数が少なく、天下の銭糧の検査が困難になっているため、増員が必要である。
* 外省衛では、軍民の会議が滞っているため、按察司を派遣して正すべきである。

これらの意見は洪武帝に受け入れられましたが、翌年には罪に問われ、刑部主事に降格されました。

上奏と処罰

茹太素は、その後も自身の考えを曲げず、当時の急務をまとめた一万言にも及ぶ上書を提出しました。その中で彼は、「才能のある士がほとんどおらず、現在任官しているのは無能な官吏ばかりだ」と指摘し、洪武帝の怒りを買いました。皇帝は茹太素を呼び出して詰問し、朝廷で杖罰を与えました。しかし、翌日にはその上書を再び検討し、実施すべき事項を四つ見出し、茹太素の意見を一部採用しました。ただし、文章が長すぎるとして、上奏文の形式を定めるよう命じ、簡潔に利害得失を述べるように指示しました。

地方官としての経験

1377年、茹太素は浙江参政として地方に派遣されますが、間もなく郷里に戻されました。その後、1383年に南京に召還され、刑部試郎中となります。そのわずか1ヶ月後には都察院僉都御史に昇進しましたが、すぐに翰林院検討に降格されました。しかし、1385年には戸部尚書に抜擢され、その能力を高く評価されていたことが伺えます。

剛直な性格と最期

茹太素は、その剛直な性格から度々罪に問われましたが、洪武帝は彼を許し続けていました。ある宴席で、洪武帝は茹太素に酒を勧め、「金杯をおまえとともに飲むと、白刃が互いに余ることはない」と述べました。これに対し、茹太素は「丹誠をもって国に報いんと図り、聖心の焦りを避けず」と答え、自身の忠誠心を表明しました。しかし、その直後、御史に左遷され、詹徽（せんき）を排斥しようとしたことで、同僚12人とともに足枷をつけられました。最終的に罪に問われ、処刑されました。

茹太素の生涯は、明初期の政治における官僚の苦悩と、皇帝の絶対的な権力を示す事例として歴史に刻まれています。彼の諫言は時に皇帝の怒りを買い、処罰の対象となりましたが、その一方で、その能力と忠誠心は皇帝にも認められていたと言えるでしょう。

もう一度検索