荒井昌一

荒井昌一：FMWを支え、 散った男

荒井昌一（1965年12月19日 - 2002年5月16日）は、かつて日本のプロレス団体「FMW」で代表取締役社長兼リングアナウンサーを務めた人物です。東京都足立区出身。

FMW入社まで

荒井は東京都立航空工業高等専門学校に在籍していましたが、ボランティア活動を通じて福祉に関心を抱き、高専を中退。福祉施設に就職するも、介護のあり方に疑問を感じて退職し、1989年に大仁田厚が設立したばかりのFMWに入社しました。幼少の頃からプロレスに憧れていた荒井にとって、FMWはまさに夢を叶える場所でした。

リングアナウンサー、そして社長へ

アマチュアバンドでボーカルを務めていた荒井は、FMW旗揚げ当初からリングアナウンサーとして活躍。その特徴的なスタイルとよく通る声で、瞬く間に人気を集めました。リングアナウンサーの傍ら、FMWの子会社である「FMWクリエイティブ」では、取締役広報部長としてグッズや芸能活動のマネジメントも担当しました。1995年、大仁田厚の引退に伴い、荒井はFMWの社長に就任。2002年の倒産までその職を務めました。

社長として

社長就任後、荒井は若手のハヤブサをエースに据え、大仁田時代のデスマッチ路線からエンターテイメント路線への転換を図りました。自らもレスラーとして数試合に出場するなど、団体を盛り上げるために奔走しました。しかし、1999年に冬木弘道がコミッショナーとして実権を握ると、荒井は「悪徳社長」として扱われ、冬木に裏切られるという屈辱も味わいました。

団体を盛り上げるためにリング上で得意のギターを奏でながら「翼をください」を熱唱したこともありました。

倒産、そして…

しかし、CS放送の事業中止、エース・ハヤブサの負傷欠場、興行不振などが重なり、FMWの経営は悪化の一途を辿ります。荒井は資金繰りのために奔走し、消費者金融や商工ファンドからの借金、親族・知人からの借入など、あらゆる手段を講じました。しかし、その努力も虚しく、2002年2月14日、FMWは倒産。荒井自身も多額の借金を抱え、家庭崩壊、両親の自己破産という状況に追い込まれました。

FMW倒産後、荒井は借金取りから逃れるように身を隠していましたが、2002年5月16日、葛飾区の水元公園で首を吊って自殺しているのが発見されました。享年36歳。その死は、プロレス界に大きな衝撃を与えました。

遺されたもの

荒井は、FMWの社長時代を綴った著書『倒産!FMW カリスマ・インディー・プロレスはこうして潰滅した』を遺しました。同書では、大仁田厚をはじめとする人気選手の裏側や、団体の経営・運営に関する苦悩が赤裸々に語られています。

また、荒井の死後には、その生涯を追悼する書籍やドキュメンタリーが制作され、多くのファンが彼の死を悼みました。

荒井昌一は、FMWというインディープロレス団体を支え、その隆盛と衰退を見届けた人物でした。その短い生涯は、プロレスファンにとって忘れられないものとなっています。

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