荒野のストレンジャー

映画『荒野のストレンジャー』の概要

『荒野のストレンジャー』（こうやのストレンジャー、原題：High Plains Drifter）は、1973年に公開されたアメリカの西部劇で、クリント・イーストウッドが監督と主演を務めました。本作は、町の護衛を依頼されたガンマンの物語であり、イーストウッドはこの役を通じて自身の独特なスタイルを確立しました。

制作背景

映画の撮影はカリフォルニア州のモノ・レイクの岸辺で行われました。この場所は、監督であるイーストウッドがオレゴン州、ネヴァダ州を訪れ、多くのロケーションを探索した結果、選ばれました。ほとんどのシーンはこの地で撮影され、実際の町のオープンセットは40人以上の技術者によって18日かけて構築されました。さらに、追加撮影もネヴァダ州リノのウィネマツカ・レイクや、カリフォルニア州のイニョー・ナショナル・フォレストで行われました。

この映画の脚本はアーネスト・タイディマンとディーン・レイスナーが共同で執筆しました。タイディマンは後に小説版も発表しています。音楽はディー・バートンが担当し、作品全体において超自然的な要素が織り交ぜられています。本作はマルパソとユニバーサルによる共同製作であり、脚本には『フレンチ・コネクション』でアカデミー脚色賞を受賞したタイディマンの影響が色濃く反映されています。

ストーリーの展開

物語は、小さな鉱山町ラーゴに、正体不明の流れ者（ストレンジャー）が現れるところから始まります。彼は、町の住人たちが雇った3人のならず者を一瞬で撃ち倒しますが、住人たちは彼の行動に困惑するばかり。実は、これらのならず者は1年前に犯罪を犯した者たちで町の復讐劇の一環でした。

流れ者が町の護衛として雇われることで、一時的に安心感が生まれますが、彼が命じる内容は住人たちにとって驚くべきものであり、次第に混乱を招いていきます。彼は、非業の死を遂げた元保安官の墓標を見届けながら町を去っていきます。町の住人たちは、自らの選択を再評価することになるでしょう。

評価と興行成績

本作は公開後、多くの評価を得ています。レビュー・アグリゲーターサイトのRotten Tomatoesでは93%の支持率を記録し、Metacriticでは69/100のスコアを獲得しました。このような評価は、当時の映画界におけるイーストウッドの立ち位置を示すものであり、1973年には北米で800万ドルの興行収入を達成しました。

特に注目されるのは、映画公開後にジョン・ウェインがイーストウッドに評価の手紙を送ったことです。その手紙では、「映画の町民は実際のアメリカ先駆者たちの精神を示していない」といった内容が記されており、ウェインの批判的な視点が浮き彫りになっています。

映画への影響

『荒野のストレンジャー』は、クリント・イーストウッドのキャリアにおいて重要な位置を占める作品となりました。彼のスタイルは、セルジオ・レオーネやドン・シーゲルといった師たちからの影響を受け、その後の西部劇のスタンダードを築く一因となったと言われています。この映画のブラックユーモアやダークな内容は、特にレオーネの影響を色濃く反映しています。イーストウッドはこの作品を通じて、自身の独自性を強調し、観客に深い印象を残しました。

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