荘 (姓)

「荘（そう）」は、中国に起源を持つ姓、すなわち漢姓の一つです。この姓は、地域によってその分布や歴史的な背景に違いが見られます。

中国における「荘」姓

現代の中国本土における統計（2020年）では、人数の多い上位100姓には含まれておらず、比較的少ない姓であると言えます。しかし、中国語圏の中でも台湾では非常に一般的な姓の一つであり、2018年の統計によれば、全姓の中で24番目に多く、その人口は22万2千8百19人に達しています。この人口は台湾の総人口の約1パーセントに相当し、台湾社会における「荘」姓の存在感の大きさがうかがえます。

歴史的な変遷

「荘」姓の歴史を遡ると、姓の改変という特異な経緯が見られます。後漢時代、当時の皇帝である明帝（在位: 57年-75年）の諱（いみな）、すなわち名前が「荘」であったため、民衆が皇帝の名前を口にしたり書いたりすることを避ける「避諱（ひき）」の慣習により、「荘」姓を持つ多くの人々が、意味が近いとされる「厳（げん、ヤン）」姓に改姓しました。これは皇帝への畏敬を示すための措置でした。

しかし、後漢が滅亡し、その後の魏晋南北朝時代に入ると、政治的・社会的な状況が変化しました。これにより、かつて「厳」姓に改姓した家系の一部が、再び元の「荘」姓に戻る、いわゆる復姓（ふくせい）を行いました。そのため、「荘」姓を持つ家系の中には、歴史上「厳」姓であった時期を経ているものがあります。このような歴史的背景は、「荘」姓が単なる血縁を示すだけでなく、当時の社会制度や文化、そして人々の生活と深く結びついていたことを示しています。

著名な人物

「荘」姓を持つ人物の中には、歴史に名を残す多くの著名人がいます。

荘子（そうじ）: 中国の戦国時代中期に活躍した思想家です。本名を荘周（そうしゅう）といい、老子と並ぶ道家（どうけ）の代表的人物として知られています。彼の思想は『荘子』という書物にまとめられており、その奔放でユーモラスな文体と、自由な精神、物事の相対性、自然との一体などを説く思想は、後世の中国思想や文化に多大な影響を与えました。
荘勝雄（そう かつお）: 中華民国（台湾）出身の元プロ野球選手です。投手として活躍し、日本プロ野球でも千葉ロッテマリーンズなどで実績を残しました。
荘則棟（そう そくとう）: 中華人民共和国の元卓球選手です。世界のトップレベルで活躍し、特に1970年代のピンポン外交では重要な役割を果たしました。
荘智淵（そう ちえん）: 中華民国（台湾）の卓球選手です。長年にわたり世界大会で活躍し、台湾卓球界を牽引する存在の一人です。

これらの人物は、思想、スポーツなど、様々な分野で「荘」姓の名を高めています。

朝鮮における「荘」姓

朝鮮半島においても「荘」姓（朝鮮語読み: チャン、ハングル: 장）は存在します。ただし、その人口は中国や台湾と比較すると非常に少なく、2015年に韓国で行われた国勢調査によれば、韓国内での「荘」姓の人口はわずか445人にとどまります。これは韓国全体の姓の中では非常に稀少な部類に入ります。

「荘」姓は、中国における歴史的な変遷や地域ごとの人口分布の違い、そして朝鮮半島における希少性など、多様な側面を持つ姓であると言えます。また、多くの分野で才能を発揮した著名人を輩出していることも、「荘」姓の歴史を彩る重要な要素です。

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