荷物車

荷物車の概要

荷物車（にもつしゃ）は、鉄道において手荷物や新聞などを運搬するために特化した車両の一形態です。日本では、主に鉄道を使用した小荷物輸送に用いられ、鉄道の車両の称号には"荷物"を意味する"ニ"が付けられます。英語圏では、アメリカ合衆国で「baggage car」、イギリスで「luggage van」と呼ばれることが一般的です。また、ヨーロッパでは国際鉄道連合 (UIC) の規則により、車両の称号に"D"が付けられる場合が多くなっています。さらに、イギリスやその連邦国では「Parcels Van」とも称されています。

荷物車の特徴

荷物車は、側面に幅広のドアを設けており、荷物の積み降ろしを行いやすくなっています。旅客車両や一部の機関車には、荷物室が備えてあるものもあり、これを半室荷物車と呼びます。半室荷物車には小型のドアやシャッターが設けられていることもあります。荷物の積み降ろし時や、大量の荷物を積載する際に窓が破損しないよう、鉄格子で窓を保護している場合も多いです。

荷物車は、構造から見れば貨物車に近いものもありますが、扱いとしては客車の一部と見なされます。これは、歴史的に荷物車が旅客の手荷物を輸送する目的で旅客列車に連結されて運行されていたためです。そのため、通常は旅客列車に連結され、運行されます。主な幹線では、荷物車だけで構成される専用の荷物列車も存在しています。

荷物車の現況

近年、鉄道における荷物輸送は縮小し、合理化が進む中で、荷物車の廃車が進んでいます。また、旅客車両に荷物室を設けたり、牽引車や救援車といった事業用に転用されるケースも増えています。小規模な荷物輸送が行われる路線では、旅客車両の一角に荷物を配置することが一般的で、この場合、室内に仕切りカーテンを設置することもありますが、これはあくまで便宜的な措置に過ぎず、通常は荷物車とは見なされません。

21世紀に入ると、トラックドライバー不足の影響を受け、日本の鉄道会社は旅客車両の一角で宅配便の荷物を運ぶ貨客混載が行われるようになりました。ただし、これも荷物車には含まれません。また、郵便のみを扱う車両は「郵便車」という名称で呼ばれます。荷物輸送量の少ない地域では、旅客車と郵便車を組み合わせた合造車も存在します。

荷物車の種類

客車

日本における荷物車は主に、陳腐化した旅客用客車を改造したものが多いです。昭和50年代に入ると、陳腐化が進んだ旅客車の中で、久しぶりに新造された荷物車はほとんど新製後10年で廃車になりました。特急や急行列車では、荷物室を持つ電源車との連結が行われることもありますが、荷物輸送がなかった場合でも連結され続けたケースもあります。

電車・気動車

日本の電車や気動車にも荷物専用車両が存在しました。これらの車両は他の電車や気動車に併結して運行されることがよくありました。特に、短距離の小口輸送が求められている際には、荷物・郵便室を合造した車両も見られました。

荷物車の事故

荷物車に関連した事故も存在しています。1950年に起こった室蘭本線の覚生川鉄橋での脱線事故では、荷物車に大きな被害が出ました。1974年にも、荷物車から車掌が転落し死亡する事故が発生しています。これらの事故はその後の安全対策に影響を与える重要な事例となりました。

荷物車は、多機能な鉄道輸送システムに欠かせない存在であり、その役割は長い歴史の中で変遷してきましたが、今後の動向や利用法も注目されるべきでしょう。

もう一度検索