荻原井泉水

荻原井泉水について

荻原井泉水（おぎわら せいせんすい、1884年6月16日 - 1976年5月20日）は、日本の自由律俳句の先駆者であり、俳論家としても高く評価されています。彼は「層雲」を主宰し、尾崎放哉や種田山頭火などの著名な俳人たちを育てました。本名は幾太郎で、後に藤吉と名乗りますが、井泉水の名前で広く知られるようになりました。彼は日本芸術院の会員であり、その文学的貢献が認められています。

幼少期と学問への道

荻原は東京市芝区にある雑貨商の次男として生まれました。彼の家系は新潟県上越市出身で、祖父が若い頃に江戸に出てきました。幼少期には多くの試練があり、長男と長女を亡くした後、延命地蔵の占いにより「幾太郎」という名を授けられました。この名前は、長命を約束された子供の証として与えられたものでした。

彼は麻布中学から俳句を作り始め、正則中学を経て東京帝国大学では言語学を専攻しました。大学卒業後、1911年には新傾向俳句機関誌「層雲」を主宰し、新しい形式の俳句を広めようとしました。この運動には河東碧梧桐も参加しており、彼との友情がその後の活動にも影響を与えました。

自由律俳句の道

1914年には自身の第一句集『自然の扉』を発刊しました。この句集は自由律俳句の先駆けとされ、井泉水の名声を高める要因となりました。彼は季語を用いない俳句を提唱し、自然のリズムを重視した自由律を強調しました。この中で、彼は俳句を宗教的な芸術とし、「道」の観念を重視しました。

その後、彼は俳句のスタイルや表現についての見解を深めるようになり、特に浸透したのは「季題無用論」です。これにより、彼の作品は季節を超えた普遍的なテーマを取り入れるようになりました。

個人的な試練と再生

1923年に妻を亡くし、1年後には母も亡くなるという困難な時期を迎えました。この悲しみから彼は仏道に志し、京都の禅宗寺院での生活を経て積極的に各地を訪ね歩く生活を始めました。この心の変化は彼の句集や作品にも反映されることになります。

1929年には芹沢寿子と再婚し、鎌倉に転居。在住の奈良や鎌倉の風景は彼の詩作にも影響を与えました。昭和に入るとプロレタリア俳句運動が起こり、彼は新しい世代の俳人たちを指導し続けましたが、彼の思想と合わない者たちと袂を分かつこともしばしばでした。

戦後の活動と最期

1940年には日本俳句作家協会の理事に就任しましたが、その後に進んだ文学報国活動には参加せず、自由律俳句壇を牽引し続けました。彼の業績は広く称賛され、1965年には自由律の俳人として唯一、日本芸術院会員に選出されました。俳句の教授として昭和女子大学に勤務するなど、教育の分野にも貢献しました。

1976年、鎌倉の自宅で脳血栓により92歳で逝去。彼の死は、日本の俳句界における一つの時代の終焉を意味しました。戒名は「天寿妙法釈随翁居士」とされ、その一生は延命地蔵の予言通り長命を全うしました。

まとめ

荻原井泉水の生涯は、言語芸術の探求とともに、個人的なドラマや思想への探求でもありました。自由律俳句の革新をもたらし、多くの作家や詩人に影響を与えた彼の仕事は、現代の詩の世界においても重要な位置を占めています。彼の詩や評論は、今でも多くの人々に深い感動を与え続けているのです。

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