荻野昌弘

荻野昌弘は、1957年1月15日に千葉県で生まれた、日本の著名な社会学者です。彼の専門分野は文化社会学、歴史社会学、そして社会学理論に跨がっており、これらの知見を基盤として、現代社会が抱える様々な問題や現象に対する深い洞察を提供しています。長年にわたり関西学院大学社会学部の教壇に立ち、同分野の研究と教育に貢献するとともに、学部長としてもその運営に携わりました。

学歴においては、まずフランスに留学し、1982年にポール・ヴァレリー大学（モンペリエ第三大学）社会学部を卒業しました。さらに学びを深め、1988年にはパリ第7大学大学院社会科学研究科にて博士課程を修了し、社会学の博士号を取得しています。海外での長期にわたる研究生活は、その後の彼の学術活動に大きな影響を与えたと考えられます。

帰国後、荻野昌弘氏は関西学院大学社会学部に着任しました。当初は助教授としてキャリアをスタートさせ、後に教授に昇任。学術研究だけでなく、学生の指導にも情熱を注ぎました。2012年には同学部の学部長に就任し、組織運営においてもリーダーシップを発揮しています。

彼の研究テーマは多岐にわたります。初期には歴史社会学的な視点から資本主義と「他者」の関係性を分析した『資本主義と他者』（1998年）を発表しています。また、文化社会学の視点から、現代社会における詐欺や贈与といった現象を考察した『零度の社会 詐欺と贈与の社会学』（2005年）は、社会における信頼や関係性の変容を鋭く描き出しています。さらに、社会的な空間と暴力の問題に着目し、いじめや自殺といった痛ましい出来事が生じる背景にある構造を分析した『開発空間の暴力―いじめ自殺を生む風景』（2012年）は、現代社会の病理に迫る重要な論考です。

文化遺産についても社会学的なアプローチを試みており、『文化遺産の社会学 ルーヴル美術館から原爆ドームまで』（2002年）では、多様な文化遺産が社会の中でどのような意味を持ち、どのように位置づけられているのかを考察しています。社会学理論においては、フランスの著名な社会学者ピエール・ブルデューの研究を深く掘り下げた『ブルデュー社会学への挑戦』（斉藤悦則氏と共編、2005年）を刊行し、理論的な側面からの貢献も行っています。

さらに、社会調査の方法論や権力の問題、現代社会における差別や排除の問題にも精力的に取り組んでおり、『社会調査と権力 〈社会的なもの〉の危機と社会学』（田中耕一氏と共編、2007年）や、『差別と排除の「いま」 第3巻 文化・メディアが生み出す排除と解放』（編著、2011年）といった著作を通じて、これらのテーマに関する議論を深めています。東日本大震災のような大規模災害が社会に与える影響についても関心を寄せ、『３・１１以前の社会学 阪神・淡路大震災から東日本大震災へ』（蘭信三氏と共編、2014年）を上梓するなど、常に変化する社会の現実に向き合い、幅広いテーマで研究活動を展開しています。

荻野昌弘氏の研究は、資本主義、文化、空間、暴力、差別、災害といった現代社会を理解する上で避けて通れない諸問題に対して、社会学の視点から多角的な分析を提供しています。その多様な著作と研究活動は、日本の社会学界において重要な位置を占めています。

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