菅野鋭

菅野 鋭（すげの とし）

菅野鋭は1884年に東京都で生まれました。彼の家庭は信仰に深く根付いており、両親は銀座美以教会（現: 日本基督教団銀座教会）の信者でした。これにより、幼少期からキリスト教の教えに触れる環境で育ちました。彼の姉、眞子は、後に三谷種吉の妻となりました。

教育と牧師としてのキャリア

菅野は東洋宣教会の聖書学院で学び、1908年に牧師としての道を歩み始めます。彼は大沢豊助と共に、山形県楯岡市の福音伝道館の牧師に任命され、信徒への献身的なサービスを開始します。その後も、様々な教会で牧師として活躍していきました。

特に記憶に残るのは、1911年に中田重治の妻かつ子が亡くなった時のことで、菅野は学院教会の牧師として、彼女の葬儀で詩篇90篇を朗読しました。彼の深い感性と信仰は、教会の人々に感動を与え、また彼自身の信仰を強めるものとなったでしょう。

1920年には横浜ホーリネス教会の第3代目の牧師として就任し、1929年には柏木聖書学院の講師に任命されます。この時期、彼の教育者としての活動も評価されており、教会の若者たちにも影響を与え続けました。1933年には学院の管理体制の変化に伴い、選挙で委員に選ばれるなど、彼は教会内での重要な役割を担います。

戦争と宗教弾圧

しかし、太平洋戦争が勃発すると、菅野は宗教弾圧の波に直面しました。1942年6月26日、第一次一斉検挙で逮捕され、彼は拘置所に送られました。厳しい環境の中でも、彼の信仰は揺るがず、獄中で「天皇もイエス・キリストの贖罪が必要である」と語ったというエピソードは、彼の強い信念を示しています。

彼は1943年12月1日に、肺結核の再発により獄中で亡くなりました。この時代の彼の苦悩は、単なる個人の苦境を超えて、多くの信者にとって象徴的な意味を持つこととなりました。彼の死は、宗教的な自由が脅かされる中、信仰を貫いた一人の牧師の物語として語り継がれています。

評価と後世への影響

1996年には、彼の獄中での訊問調書がエディタによって編纂され、「殉教」という題で出版されました。これにより、菅野鋭の信仰と苦難の歴史は、さらに多くの人々にも知られることになりました。

菅野鋭の生涯は、日本のキリスト教の歴史の中で重要な位置を占めており、彼の信仰、奉仕、そして宗教の自由のために戦った姿勢は、今もなお多くの人々に感銘を与えています。

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