菊地達也

菊地達也：イスラーム思想史研究の第一人者

菊地達也氏は、現代日本を代表するイスラーム学者の一人です。1969年、山形県天童市に生まれ、東京大学文学部イスラム学科を卒業後、同大学大学院人文社会系研究科博士課程を修了しました。博士論文は「イスマーイール派の神話と哲学―ハミードゥッディーン・キルマーニーの思想を中心として」というテーマで、イスラーム思想史における重要な一端を担うイスマーイール派の思想を深く掘り下げた研究です。

大学院修了後は、神田外語大学において専任講師、准教授として教鞭をとり、2013年には東京大学人文社会系研究科准教授に就任。現在は東京大学教授として、後進の育成と研究活動に尽力されています。

菊地氏の研究は、イスマーイール派のみならず、イスラーム思想史全般にわたります。特に、イスラームにおける「異端」と「正統」という対立軸を歴史的、思想的に考察する視点は、従来の研究にはない独特のものです。多角的な視点からイスラームの世界観や歴史を解き明かすことで、日本におけるイスラーム研究に大きな貢献を果たしています。

その学問的貢献は、数々の著書や論文、翻訳によって裏付けられています。2005年に刊行された『イスマーイール派の神話と哲学 イスラーム少数派の思想史的研究』は、彼の代表作であり、この著作により、学術界における高い評価を得て、中村元賞を受賞しました。この賞は、日本における宗教研究において最も権威ある賞の一つであり、彼の研究の質の高さを示しています。

さらに、他の著書として『イスラーム教「異端」と「正統」の思想史』（2009年）、『図説 イスラム教の歴史』（2017年）、『ドゥルーズ派の誕生 聖典『英知の書簡集』の思想史的研究』（2021年）などがあります。これらは、いずれもイスラーム研究において重要な文献であり、多くの研究者や学生にとって必読書となっています。また、監修として『イスラムがわかる!』（2013年）や、翻訳としてマリーズ・リズン著『1冊でわかる イスラーム』（2004年）、ジョン・L. エスポズィト編著『オックスフォード イスラームの辞典』（2020年）など、一般向けから専門家向けまで幅広い著作に携わっています。

菊地達也氏の研究は、イスラーム世界に対する理解を深める上で欠かせないものです。彼の著作は、専門家のみならず、イスラームに関心を持つすべての人にとって、貴重な知見を提供してくれます。これからも、彼の研究活動から目が離せません。

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