菊竹倉二

菊竹 倉二（きくたけ くらじ）は、1914年（大正3年）に生まれ、1957年（昭和32年）11月25日に43歳でその生涯を閉じた日本の造園系都市計画家です。短い人生でしたが、戦前・戦中から戦後復興期にかけて、日本の都市や公園のあり方に関わる重要な役割を果たしました。

前半生と初期のキャリア

福岡県で生まれた菊竹氏は、旧制第五高等学校で学んだ後、1937年（昭和12年）3月に東京帝国大学農学部農学科を卒業しました。同年8月には静岡県土木部計画課に奉職し、キャリアをスタートさせます。

1939年（昭和14年）9月からは、日本の租借地であった関東州（現在の中国東北部）の土木部計画課に転勤となりました。この地では、公園の造成や都市計画に関わる業務を担当したほか、関東神宮の造営事業にも参加しています。当時の状況について、親交のあった楫西貞雄氏は、技術者が次々と大陸へ渡った時代であり、都市計画の分野では大陸方面が進んだ地域であったという当時の風潮に言及しています。菊竹氏はこの関東州での勤務中に結婚しています。

第二次世界大戦末期の1945年（昭和20年）8月までの約4ヶ月間は従軍し、終戦を経て1947年（昭和22年）3月に日本へ帰国しました。

戦後復興と国の計画に貢献

帰国後、菊竹氏は1947年（昭和22年）6月から広島県土木部計画課に勤務。ここでは、被爆した広島の戦災復興事業に尽力しました。焦土と化した都市の再生計画に携わるという、極めて困難かつ重要な使命を担ったのです。

その後、1951年（昭和26年）6月からは首都建設委員会に籍を移し、戦後の首都東京の都市計画やその研究を推進しました。高度経済成長期を迎える前の東京の骨格づくりに関わったと言えます。

さらに、1955年（昭和30年）12月からは建設省計画局都市計画課に転じ、活動の舞台を全国へ広げました。ここでは、全国の都市計画に関する研究・立案や、公園計画の推進に力を注ぎました。特に、1956年（昭和31年）4月に公布された都市公園法（昭和31年法律第79号）の制定に向けた作業にも深く関わっており、日本の公園行政の基盤整備に貢献しています。

人物像と研究活動

前述の楫西貞雄氏は、菊竹氏の追悼文の中で、その人物像や仕事への姿勢について述懐しています。菊竹氏は研究や執筆活動に熱心で、イギリスの都市計画家エベネザー・ハワードの代表的な著作である『明日の田園都市』の全訳を試みていた形跡があり、その原稿が遺族の元に残されているといいます。これは、海外の先進的な都市計画思想を日本に導入しようとする強い意欲を示すものと言えるでしょう。

個人的な嗜好としては、麻雀や碁といった勝負事にはあまり関心がなく、酒もそれほど好まなかったとされています。趣味は写真や映画鑑賞だったとのこと。また、当時の東京観光案内書の執筆に関わったとも伝えられています。

楫西氏は、菊竹氏のキャリアを振り返り、その勤務内容は具体的な事業執行よりも、都市計画や公園計画といった構想・計画立案の最前線を歩んだものだったと評しています。

菊竹倉二氏は、太平洋戦争を挟む激動の時代に、大陸、被爆地、そして首都・国の機関と場所を移しながら、常に都市計画や造園計画の分野で重要な役割を果たしました。研究者肌でありながら実務にも深く関与し、近代日本の都市計画史において記憶されるべき人物の一人と言えます。

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