華南MALL

華南MALL：巨大ショッピングモールの光と影

中国広東省東莞市に位置していた華南MALL（華南モール）は、2005年の開業当時、世界最大のショッピングモールとして名を馳せました。その規模は圧巻で、約66万平方メートルの広大な敷地に、多様なテナントやアトラクションが詰め込まれていました。しかし、その華々しいデビューとは裏腹に、華南MALLはその後、閉鎖へと向かう複雑な運命を辿ることになります。

開業から衰退へ：世界最大モールの挫折

2005年の開業時は、金源時代ショッピングセンターを抜き、世界最大規模を誇りました。アムステルダム、パリ、ローマ、ヴェネツィア、エジプト、カリブ海、カリフォルニア州をテーマにした7つのエリアは、ヤシの木や彫刻など、異国情緒あふれる空間を演出。中央広場には、フリーフォールや急流下り、回転ブランコといったアトラクションに加え、ボート乗り場、ゴーカート、ゴンドラ、海賊船など、エンターテインメント施設も充実していました。

テナントも、マクドナルド、ケンタッキーフライドチキン、ピザハットといったグローバルチェーンから、中国本土企業、スーパーマーケット、映画館、ホテル、そして東莞工場のアウトレットモールまで多岐に渡り、多様なニーズに対応できる体制を整えていました。さらに、広州、深圳、香港の国際空港へのバス乗り場も設置され、交通アクセスも良好でした。

しかし、この巨大モールは次第に衰退の一途を辿ります。最小面積が大きすぎること、賃料が高すぎること、そして事務所利用ができないことなどから、テナントの入居率は低迷。1500を超える小売スペースの多くが空き店舗となり、2013年には入居率はわずか20%と報じられました。事実上、機能停止状態にあったと言えます。かつて入居していた銅羅湾百貨や時尚百貨、B&Qなども姿を消しました。

駐車場問題：巨大モールを支えきれなかったインフラ

華南MALLの衰退を招いた要因の一つに、駐車場の不足が挙げられます。北米最大のショッピングモールであるウェスト・エドモントン・モールが2万台収容可能なのに対し、華南MALLは1万台と、その規模に見合わぬ少なさでした。自転車利用が多い中国の消費者の行動様式も考慮すべきではありましたが、巨大モールの集客能力を考えると、駐車場の不足は大きな問題でした。

交通アクセス：東莞市内バスとタクシー

東莞市内最大のバスターミナルである東莞汽車総站から東へバスで1停留所というアクセスでしたが、中間にあるインターチェンジのため、徒歩15分は必要でした。バス停の名前は旧称の「華南摩尓」のままだったことも、やや分かりづらさにつながっていた可能性があります。市役所のある南城区からはタクシーで約15分と、比較的アクセスしやすい立地でした。

結論：成功と失敗の両面を示す事例

華南MALLは、世界最大のショッピングモールとして華々しくデビューしたものの、様々な問題を抱え、その規模ゆえの課題を克服することができませんでした。その栄枯盛衰は、巨大な施設の運営における難しさ、そして市場ニーズの把握の重要性を改めて示す、貴重な事例と言えるでしょう。巨大な投資と野心的な計画にもかかわらず、テナント誘致や駐車場問題、そして市場分析の不足が、この巨大モールの衰退を招いたのです。華南MALLの物語は、商業施設開発における成功と失敗の両面を学ぶ上で、重要な教訓を与えてくれます。

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