菱紋

菱紋について

菱紋（ひしもん）は、日本の家紋の一種であり、その名の通り菱形をモチーフにした紋章です。単独の菱形だけでなく、複数の菱形を組み合わせたデザインも多く見られます。唐花紋に分類される唐花菱紋も広義には菱紋に含まれますが、本稿では主に菱紋そのものに焦点を当てて解説します。

菱紋の起源と歴史

菱紋のデザインは、水草であるヒシの実や葉を図案化したものという説がありますが、単純な幾何学模様であるため、その起源は明確ではありません。菱形の文様は古代から存在し、日本では縄文時代の土器にも描かれています。家紋としての菱紋は、連続した菱形模様の織物から派生したと考えられています。

菱紋が家紋として現れたのは、1370年頃とされています。南北朝時代に成立した『太平記』には、大内修理亮が直垂に「大菱」を用いたという記述があります。また、1392年の『相国寺塔供養記』には、武田信任の直垂に「違い菱」が用いられていたことが記されています。

菱紋の多様な図案

菱紋は大きく「菱紋」と「唐花菱紋」に分けられます。菱紋の基本的な形は「菱持」であり、これを組み合わせたり変形させたりして様々な図案が作られます。

割り菱: 最も一般的な菱紋で、複数の菱形を重ねたものです。
三階菱: 3つの大小の菱形を重ねたものです。
松皮菱・松葉菱: 菱形を松の皮や葉に見立てたものです。
寄せ三つ菱: 3つの菱形を放射状に配置したものです。

一方、「唐花菱紋」は、花弁のような形状の4辺を寄せたもので、「唐菱」とも呼ばれます。また、ヒシを写実的に模した「葉菱」や「菱の実」といった図案も存在します。

特に有名なものとして、「大内菱」を含む「幸菱」があります。また、「武田菱」は武田氏が使用したことで知られていますが、これは「割り菱」の一種であり、菱形同士の間隔が狭いものが「武田菱」として区別されることがあります。

その他の菱紋

「寄せ三つ菱」は、三菱グループの「スリーダイヤ」と同図案ですが、その由来は異なります。また、「三つ盛り菱」は「割り菱」の最下の菱形1つが欠けたものです。

菱紋と関連する事物

菱紋は、日本の歴史や文化の中で様々な形で用いられてきました。

家紋: 多くの武家や公家が菱紋を家紋として使用しました。
企業: 三菱グループのように、企業がシンボルマークとして菱紋を使用している例もあります。
警察: 山梨県警察の機動隊部隊章に武田菱が使われています。
その他: 山口組や神戸山口組などの組織でも菱紋が用いられています。

菱紋は、そのシンプルでありながら多様なデザイン性から、様々な分野で愛され続けています。

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