萱野重利

萱野重利：大島家家老の生涯と赤穂事件の影

萱野重利は、江戸時代中期に活躍した武士です。寛永6年（1629年）、摂津国で5000石の旗本、大島家の家臣の子として誕生しました。通称は七郎左衛門。

幼少期から優れた能力を発揮し、兄の養子となり萱野家の家督を継承。その後、大島義近、義也父子の家老として仕え、その信頼は厚いものでした。特に大島氏の所領である倉橋庄（現在の豊中市大島町）の代官として手腕を発揮し、領地の運営に大きく貢献しました。

重利の活躍は、家臣としての職務に留まりませんでした。彼の三男、重実は赤穂藩主・浅野長矩に仕えていました。しかし、浅野長矩の吉良義央への殿中刃傷事件により、赤穂藩は改易という厳しい運命を辿ることとなります。

この事件で、重実は江戸からの急使として赤穂へ派遣されました。そこで彼は、大石良雄らと共に仇討ちの計画に加わることを決意。有名な「神文血判」にも名を連ねたのです。赤穂城開城後、重実は故郷である萱野郷の実家に身を寄せました。

この時、大島義也は重実に大島家への再仕官を勧めます。重利もまた、息子に仕官を促しました。しかし、重実はこれを断りました。この行動から、重利は息子が依然として仇討ちを企んでいるのではないかと疑念を抱くようになりました。

そして、重利は重実に一党から抜けるよう命じます。父と子の間には、深い溝が刻まれたのです。元禄15年（1702年）1月、忠義と孝行の間で激しい葛藤を続けた重実は自刃という道を選びます。そのわずか数ヶ月後、同年8月6日、重利もまたこの世を去りました。享年74歳。

重利の死後、家督は長男の萱野重通が継承しました。重利の生涯は、武士としての忠義と、血縁の絆という複雑な感情の狭間で揺れ動いた、波乱に満ちたものでした。赤穂事件という大きな歴史的出来事の影に隠れてしまうことがありますが、彼の生き様は、江戸時代の人々の生き様の一端を私たちに伝えてくれていると言えるでしょう。彼の功績と苦悩は、後世に語り継がれるべき歴史の重要な一部を担っていると言えるでしょう。

重利の三男である重実、通称三平は、萱野三平として知られています。彼を巡る物語は、赤穂義士の忠義の物語と深く関わっており、今もなお多くの人々の心に響く、悲劇とドラマに満ちた物語となっています。

萱野重利とその子孫の足跡は、現在でも残る萱野三平旧邸（箕面市）などを通して、現代に受け継がれています。この地を訪れることで、江戸時代の歴史に思いを馳せることができるでしょう。

もう一度検索