落日燃ゆ

小説『落日燃ゆ』の概要

『落日燃ゆ』は、日本の著名な作家・城山三郎が1974年に発表した小説であり、元首相でA級戦犯として絞首刑となった広田弘毅の人生を中心に描かれています。この作品は、新潮社から刊行され、1986年には新潮文庫に収められました。本作は、広田の生涯を通じて日本の戦争責任や歴史的な事件を深く探求しており、文学的にも高く評価されています。『落日燃ゆ』は、第28回毎日出版文化賞と第9回吉川英治文学賞を受賞しており、その評価の高さを物語っています。

名誉毀損訴訟の経緯

作品の中には、広田に関連する多くの著名な人物が登場しますが、その一人、元外交官の佐分利貞男の描写が論争を呼び起こしました。佐分利についての不適切な表現があったとし、彼の甥が作家の城山に対して名誉毀損の訴訟を起こしました。この場合、佐分利は1929年に亡くなっており、故人に対する名誉毀損が民法上認められるかどうかが大きな焦点となりました。

一審では、東京地方裁判所が原告の敗訴を判決しました。裁判所は、「遺族の死者に対する敬愛の情に基づく人格的利益が社会的に許容される範囲を超えて侵害された場合、遺族は救済を求める権利がある」としつつ、本件ではその範囲を超えないと判断しました。原告側はこれを不服として控訴しましたが、東京高等裁判所も原告敗訴を支持し、判決内容について詳細に言及しました。

作品のテレビドラマ化

『落日燃ゆ』は、1976年と2009年の二度にわたり、テレビドラマとして映像化されました。最初の1976年版はNETテレビで放送され、原作者の城山自身も脚本に参加し、高い評価を受けました。このドラマは第31回文化庁芸術祭の優秀賞を受賞するなど、視聴者に強い印象を残しました。

2009年には、テレビ朝日の開局50周年を記念したドラマが放送され、再び広田弘毅の生涯が描かれました。この作品では豪華なキャストが起用され、視聴率も11.1%と好調でありました。役者たちの熱演と緻密な脚本により、改めて広田の生涯を多くの視聴者が知ることとなりました。

書籍情報

小説『落日燃ゆ』は、出版以来多くの版が発行されており、1974年から2002年までに数回再刊行されています。新潮文庫版はもちろん、高齢者向けの大活字版や伝記文学にも収録されていて、多くの人々に読まれてきました。特に戦争や歴史に興味を持つ読者にとって、貴重な資料としての位置づけを持っています。

総じて、城山三郎の『落日燃ゆ』は、歴史的な観点から日本を見つめ直す作品であり、文学界においても重要な役割を果たしています。また、その影響力は小説の枠を超えて、裁判の東京高等裁判所における判例としても語られ続けています。

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