葉山修平

葉山修平（はやま しゅうへい）は、本名を安藤幸輔（あんどう こうすけ）といい、1930年3月16日に千葉県市原市で生まれ、2016年8月28日に86歳で逝去しました。作家、詩人として知られる一方、教育者や文学研究者としても顕著な業績を残しました。

千葉県で学業を修めた後、東京大学大学院で国文学の修士課程を修了します。文学活動の出発点の一つとして、1955年には林富士馬、太田浩らと共に文学同人誌『玻璃』を創刊しました。彼の作家としての名前が世に出るきっかけとなったのは、1957年に『文芸日本』に発表した短編小説「バスケットの仔猫」でした。この作品を読んだ室生犀星から激励と助言の手紙を受け取ったことが、後の犀星研究へと繋がる重要な出会いとなります。

創作面では、1960年に短編「日本いそっぷ噺」が第43回直木三十五賞の候補作に選ばれ、同年中に単行本として出版されました。また、1963年には短編「現在完了」が第16回文学界新人賞の佳作を受賞し、作家としての実力を確固たるものとしました。作品は多岐にわたり、『終らざる時の証しに』『芭蕉曼荼羅』といった小説から、『小説室生犀星』『薔薇とペルソナ―小説三島由紀夫』など実在の作家を主題としたもの、さらに『古事記ものがたり』『曽我物語』といった古典を題材にしたものまで、幅広いテーマに取り組みました。詩人としても活動し、『花と木魚』などの詩集を発表しています。

作家活動と並行して、教育者としても長きにわたり教壇に立ちました。開成高校の教諭や千葉大学の講師を務めた後、駒沢短期大学の教授に就任し、後には名誉教授の称号を得ています。多くの学生に文学の面白さを伝えました。

特に、室生犀星の文学とその生涯に関する研究は、葉山修平のキャリアにおいて重要な位置を占めます。犀星との親交から生まれた深い関心に基づき、精力的な研究活動を展開しました。1984年には室生犀星学会を立ち上げ、初代会長として研究の発展に貢献しました。1994年には、犀星文学の創作方法論を論じた著書『小説の方法』によって、第1回室生犀星顕彰大野茂男賞（研究・評論部門）を受賞し、その研究成果が高く評価されました。また、2008年には『室生犀星事典』の監修を務めるなど、室生犀星研究の第一人者としての地位を確立しました。

評論家、随筆家としても多くの著作があり、『新しい文章作法』『近代の短編小説』『日本文学にみる〈笑い〉〈女性〉〈風土〉』など、文学論や文筆論、さらには郷土千葉県の文学に関する著書も刊行しています。

出身地である千葉県市原市との繋がりも深く、2011年には市原高校に葉山修平の文学碑が建立され、その功績が称えられました。

2016年8月28日、多臓器不全のため、療養していた千葉県市川市の病院で亡くなりました。作家、詩人、教育者、そして文学研究者として、多方面で日本の文化・教育に貢献した生涯でした。

もう一度検索