林富士馬

林 富士馬（はやし ふじま）について

林富士馬は、1914年7月15日に東京府で誕生した詩人であり、文芸評論家、さらに医師でもあります。俳号は「空花」として知られ、彼の文学的な表現は多岐にわたります。

来歴・人物

彼は東京府大曲に生まれ、少年時代は長崎県で育ちました。長崎では著名な文学者、渡辺庫輔と交友を深め、文学への関心を高めました。慶應義塾大学の文学部に在学中、彼は佐藤春夫の弟子となり、1935年頃には太宰治と出会います。最初の詩集『誕生日』は、1939年に佐藤春夫の序文を受けて私家版として発刊されましたが、当時の友人である太宰の激しい生活に影響を受け、一時は文学から距離を置くことになります。

その後、慶應義塾大学を中退し、日本医科大学を卒業して医師としての道を選びました。1943年には、若き文学青年の三島由紀夫と知り合い、その才能に感銘を受けました。三島は自身の回想録で、彼が日本浪曼派に繋がる二つの重要な糸の一つとして林富士馬を挙げています。

戦前から戦後にかけて、彼はさまざまな同人誌の中心メンバーとして活動し、『天性』『まほろば』『曼荼羅』『光耀』『プシケ』『新現実』『VIKING』など、影響力のある作品に関与しました。第二次世界大戦後には小児科医とし開業し、1958年から1980年まで『文學界』にて同人誌評を連載しました。この実績により、1979年には菊池寛賞を受賞することとなります。

1995年には彼の評論と文学の集大成として『林富士馬評論文学全集』が発刊され、多くの読者に彼の思想や作品が再評価される機会となりました。

著書

林富士馬の著書には多くの詩集や評論が収められています。代表作としては、1977年に出された『詩人と風景』や、1978年の『行々子 空花俳諧俳論集』、1983年の『川柳のたのしみ 俳諧詩としての三六五句』があります。また、1988年には『偲ぶ草』、1991年には『十薬 詩集』、そして1992年には『コロンブス 未知の世界にいどみ、一生を海にかけた探検家』といった作品も発表しました。また、1995年に刊行された『林富士馬評論文学全集』も重要な作品の一つです。

共著・翻訳・解説

林富士馬は独自の視点で多くの共著や翻訳を手掛けました。1965年には尾崎秀樹との共著で『英雄の診断 医学から見た日本史』を発表し、1972年には伊東静雄に関連した著作『苛烈な夢』を共著で執筆しています。また、中国古典兵法書『六韜』の翻訳や解説も行い、1987年に教育社から出版されています。2002年には、志村有弘による評伝『林富士馬の文学』が刊行され、彼の文学生涯が改めて振り返られています。

林富士馬は、詩人だけでなく、医師として多忙な日々を送りながら多くの後進に影響を与え続けました。

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