葉漢

葉漢（イップ・ホン） - マカオ賭博王の生涯

葉漢（ヨウカン、広東語読み:イップ・ホン、1904年-1997年）、20世紀を代表するマカオの賭博王。その名は、華南における賭博界の隆盛と深く結びついています。彼は、広東省江門市に生まれ、幼少期から博戯に親しみ、類まれな才能を周囲に認めさせました。

若き日にマカオへ渡った葉漢は、当時の賭博界の大物、傅老榕の下で手腕を磨きます。そこで彼は、賭博場を荒らしまわるイカサマ師集団「聽骰黨」を一掃する活躍を見せ、名を馳せることになります。その後、上海へと渡り、カジノ経営で巨万の富を築き上げました。

1937年、日中戦争の勃発により、上海での事業を断念した葉漢はマカオへ帰還。直ちにカジノ事業のライセンスを取得し、再び事業を展開します。そしてスタンレー・ホー、テディ・イップ、霍英東らと共にカジノ・リスボアを経営、マカオにおけるカジノビジネスの黄金時代を築き上げることに貢献しました。しかし、経営方針を巡る対立から、葉漢はカジノ・リスボアから撤退。その後、マカオ・ジョッキークラブの競馬事業に参入しますが、思うような成功は収められず、スタンレー・ホーに事業を売却します。

1988年、葉漢は新たなビジネスモデルとして、公海上でのギャンブル事業に着手。まず、貨物船を改造した船舶「プリンセス・オブ・ジ・オリエント」を導入し、後に豪華客船「港龍星」を購入して事業を拡大しました。この事業は当初成功を収めましたが、競合他社の参入により経営は次第に悪化し、最終的にはヒョン兄弟に事業を売却することになりました。

葉漢は、事業家としてだけでなく、並外れたギャンブルの腕前でも知られていました。数々の伝説的なエピソードが残されています。例えば、1980年代半ばには、ラスベガスで32時間に渡り3800回以上のバカラをプレイし、200万ドルもの損失を出しながらも、カジノオーナーからの挑戦を受け、2日後に300万ドルとロールスロイスを勝ち取るという驚異的な出来事がありました。

1997年5月7日、葉漢はヴィクトリア・ピーク麓の高級住宅街にある自宅で、競馬新聞を読みながら予想をしている最中に心筋梗塞で急逝。享年93歳でした。その生涯は、華麗な成功と大胆な挑戦、そして予測不能な展開に満ちた、まさに波乱万丈の物語だったと言えるでしょう。彼の存在は、マカオのカジノ史に永遠に刻まれることになります。葉漢が残した伝説は、現代においても語り継がれ、賭博界におけるカリスマ的存在として、多くの人の記憶に留まり続けています。彼の賭博に対する情熱、そしてビジネスにおける大胆な戦略は、後世の事業家たちにとっても貴重な教訓となるでしょう。彼の生涯は、成功と失敗、そして常に変化するビジネス環境の中で生き抜く知恵と勇気を教えてくれます。

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