著作権延長法

著作権延長法：ミッキーマウスと憲法、そして世界の波紋

1998年、アメリカ合衆国で制定された著作権延長法(CTEA、通称ソニー・ボノ著作権延長法)は、著作権の保護期間を大幅に延長したことで知られています。この法律は、1977年以前に発表された著作物の法人著作権保護期間を、それまでの発行後75年から95年に延長。1978年以降に発表された作品についても、著作者の死後70年、または発行後95年、制作後120年のいずれか短い期間へと保護期間を拡大しました。

法律の名称は、歌手で後に上院議員となったソニー・ボノに由来しています。彼の尽力により成立したこの法律は、しかし、その背景や影響から、多くの議論を呼ぶこととなります。

ディズニーと「ミッキーマウス保護法」

CTEA成立の背景には、1928年に誕生したミッキーマウスの著作権切れが迫っていたこと、そして、権利者であるウォルト・ディズニー・カンパニーの強いロビー活動があったとされています。そのため、この法律は皮肉を込めて「ミッキーマウス保護法」や「ミッキーマウス延命法」と揶揄されることもありました。

実際、この法律によって、ミッキーマウスやミニーマウスの著作権切れは先延ばしされ、『蒸気船ウィリー』の著作権が2023年12月31日に失効するまで、その保護は継続されました。ただし、ミッキーマウスやドナルドダックといったキャラクター名や作品名は、商標権などの知的財産権によって保護されているため、著作権が切れたとしても、自由に商用利用できるわけではありません。

憲法違反訴訟と最高裁判決

CTEAは、アメリカ合衆国憲法第1条第8節第8項(議会は、限られた期間中、作家と発明家に対して著作や発明に対する独占権を与えることができる)に違反するとして、憲法違反訴訟が提起されました。この訴訟には、多くの個人、法学者、経済学者、そして全米作家協会などが支持を表明。合衆国最高裁判所まで持ち込まれたこの訴訟は、最終的に7対2で合憲と判断されました(2003年)。

世界への影響と批判

この判決後、アメリカ合衆国通商代表部は、各国に対して著作権保護期間の延長を強く求めるようになりました。メキシコは保護期間を100年に延長し、日本も映画やその他の著作物の保護期間を延長。オーストラリアも同様の措置を取っています。しかし、カナダ、ニュージーランド、台湾などは、アメリカ合衆国からの延長要求を拒否し、現在も50年の保護期間を維持しています。

CTEAは、著作権切れ間近の作品の保護期間を延長した一方で、著作権の所在が不明な「孤児著作物」を大量に発生させたという批判もあります。そもそも、保護期間延長によって、一般の人々がアクセスできる作品が全体の1～2％に過ぎないという指摘もあります。

CTEAは、著作権保護と表現の自由、そして経済的影響といった複雑な問題を浮き彫りにした法律と言えるでしょう。この法律は、世界各国における著作権制度のあり方、そして文化と経済のバランスについて、今なお重要な議論を呼び起こし続けています。

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